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【社会】

近づく聖火、困惑走る 長野、問い合わせ殺到

2008年4月10日 朝刊

電話の対応などに追われる事務局の職員たち。手前はリレーで実際に使うトーチ=9日、長野市内で

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 北京五輪の聖火が欧州から米サンフランシスコへ渡り、抗議行動も大西洋を越え“リレー”された。国内唯一の開催地で26日に迎える長野市民や市実行委は困惑の色を深める一方、市民団体はチベット問題のアピールへ向けて動きだしている。

 公募で聖火ランナーに選ばれた市民の1人、長野市の山岸重治さん(76)は「チベットの人の主張も分かる。でも非暴力は徹底してほしい」と訴える。10年前の長野五輪でも聖火ランナーとしてトーチを持った。

 80人の走者の中で最年長。国際ルートの中止やコース見直しも取りざたされているが「生涯のハイライトだと思っている。(中止になったら)気持ちの整理がつかない」と話した。

 長野市実行委の田中信行事務局長は「昨年11月から準備している。今更変更されても対応は無理」と頭を痛める。海外で騒動が起きるたび実行委には問い合わせが殺到。「本筋の仕事ができない」とぼやく職員もいる。

 日本オリンピック委員会(JOC)によると、聖火は25日早朝、チャーター機で日本へ。到着が成田、羽田空港のいずれになるかは調整中。北京五輪組織委員会のリレー運営チームの約150人が同行する。聖火は予備を含めて2つのランタンに種火を分けて運び、監視スタッフが付きそうとみられる。

 長野へは、高速道路を車で運ぶか、長野新幹線を利用するかも現段階で固まっていないという。JOCは今後も警備上の理由で公表しない方針だが「組織委から具体的な連絡がなく、待っているのが実情。運搬時の警備をどうするかもはっきりしない」と気をもむ。

 長野県警も、走者の白バイ先導は決まっているが、具体的な警備態勢は非公表。「状況に応じ警備する」とし、抗議活動の動きも注視する構えだ。

◆「誇りを持って参加」 吉田選手、有森さん

 長野の聖火リレーに参加する国内メダリストたちは、不安を抱きつつも誇りを持って挑む。

 北京五輪代表に決まり、連覇を狙うレスリング女子55キロ級の吉田沙保里選手(25)=津市出身=はテレビに映し出される欧米の抗議行動を見て「こういう問題になるとは思っていなかった」と戸惑い、リレー参加への不安を隠さない。「でも選ばれたこと自体は光栄でうれしい。予定通り走ることになれば『北京で金メダルを取る』という思いを込めて走りたい」と話した。

 また、五輪女子マラソン2大会連続メダリストの有森裕子さん(41)=国連人口基金親善大使=は「抗議すべき問題はあるので、抗議活動はいいと思うし、五輪に政治を絡めないことは無理。しかし、妨害などのやり方は尋常ではなく、問題の解決には少しも近づかないと思う」。その上で「五輪や聖火リレー自体には非はないので、オリンピアン(五輪出場者)として誇りを持って参加したい。活動される方も理解を」と呼び掛けた。

 

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