ギリシャ神話によると、ゼウス(ギリシャ人の神)は、人間をつくった時に、男と女をくっついたままでつくりました。男女が歩く時も、遊ぶ時も、いつでも一緒に行動するためです。しかししばらくすると、いつも一緒にいる二人は、退屈してケンカをするようになりました。
神は昼寝の最中に、度々彼らのケンカで起こされたので、とうとう堪忍袋の緒を切って、大きな剣で二人を切り離しました。
二人はやっと自由に自分の好きなことができると喜び、それぞれ遠く離れた自分の好きな所へ行きました。それで、しばらくの間神もゆっくり昼寝をすることができました。
そのうち切れたところの傷が非常に痛くなって、有名な医者に診てもらっても治療ができない。とうとう男はなんでもわかるヘルメスという神の所へ行って、「どうしたらこの傷を治すことができるでしょうか。」とたずねました。ヘルメスは、「この傷を治すのはむずかしいが不可能ではない。神が切り離した女を捜し出して、切れた部分をもう一度女と合わせると治るよ。」と教えてくれました。どんな女でも良いということではなく、自分の肩から切り離されたその女でないと、あなたの傷をいやすことはできない。だから、世界中をまわって、その女を捜しなさい、と答えられたのです。
愉快な神話と受け取られますが、その裏には深い意味があります。
男と女は結婚しますが、自分に会う相手は世界中でただ一人だとギリシャ人も思っていたようです。つまり自分を幸せにするには、神に切り離された自分の後の半分を捜さなければ心が満たされないということです。
司祭として長年務めているうちに、このギリシャ神話の通りだと思うようになりました。
結婚して40年、一度もケンカをしていない夫婦を私は知っています。彼らに会う度に、私は「ケンカはまだですか」と聞くのですが、二人は笑って、「神父さま、なぜケンカをする必要があるのですか」と言われてしまいます。彼らは話さなくても、お互いが必要としていることがよくわかっているようです。四人の子供もそれぞれ独立しましたが、四人とも穏やかですばらしい人達です。
私はこの夫婦をみると、結婚は本当に地上の天国だと思います。しかしこのような夫婦は少ないでしょう。神から切り離された相手ではない人と結ばれてしまうことが多いのではないでしょうか。
釧路は離婚率が高いと聞いています。結婚が人生の墓場になってしまったから離婚したのでしょう。どんなにつらいことだろうかと思います。
でもまじめに求めるなら、神はきっとその縁を現してくれるに違いありません。あわてる人は、神のつくった縁だと誤解してしまうのです。
結婚しようとしている人は、まじめに縁を求めなさい。必ず神はあなたに見せてくれます。そうすればあなたは、この地上で天国を味わうでしょう。
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