隠岐病院(隠岐の島町)で7月以降の精神科常勤医の確保のめどが立たず、精神科病棟(38床)が一時休止となる可能性が高まっている問題で、隠岐の患者家族会関係者が10日、県庁を訪れ、溝口善兵衛知事に常勤医確保と病棟維持の要望書を手渡した。溝口知事は「この先どうなるか申し上げられないが、医師確保に向け全力で努力したい」と受け取った。
県庁を訪れたのは、島後地区家族会の斎藤捷文会長(81)ら島前・島後の家族会関係者ら6人。斎藤会長が知事に要望書を手渡し、「医師がいなくなるのは大変な事態。病棟があるからこそ地域で生活できた。また、患者や家族の不安感だけでなく、医療が遠ざかることで地域に患者が及ぼす状況を考えるとぞっとする。高齢化に伴う認知症などでも精神科の需要は高まっており、不在にならないようにしてほしい」と訴えた。
また、西ノ島町家族会の桜井巌会長(78)は「うちの子には幻聴があり、本土への船に乗る場合も、周囲の視線もあるため特別な部屋を予約せざるをえない。同じ理由でバスも使えず、患者が本土へ行くのは本当に大変なこと」。自閉症の娘を持つ西ノ島町の上原ヤエ子さん(52)は「状態の悪い人を3時間かけて本土に連れていくのは本当に大変。1時間以内で行ける隠岐病院の精神科は地域で暮らす患者・家族の心の拠り所」と、本土への通院・入院の際に患者や家族が抱える厳しい現状を訴えた。
溝口知事は取材に対し、「県民の医療を確保するのは県の大きな責務、県にも責任がある。隠岐の方たちの厳しい状況を聞き、可能な限り努力しなければと思っている」とコメントした。【細川貴代】
毎日新聞 2008年4月11日 地方版