座談会で杉浦保子(29)はもう一つ耳慣れない言葉を聞いた。「コンビニ受診」。平日に近くの診療所に行けば済む症状なのに、「便利だから」とコンビニに行くような感覚で休日・夜間の救急医療を利用することだ。特に小児科で多く、医師が疲れ果て、医療崩壊の一因となる。
「私たちには何ができるのだろう」。座談会で「県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会」の結成を決めた杉浦たちはまず、署名活動に取り組んだ。兵庫県に「医師の派遣」を求めるものだが、同時に「私たちもコンビニ受診を控えます」との言葉を加えた。
友達に頼んだり、事業所に飛び込みで依頼したり……。署名活動が広がると、会への参加希望者も現れた。7人だったメンバーは、20~30代の母親15人ほどに増えた。会費も定例会もない。子育てと仕事、家事の合間を縫っての活動で、連絡を取り合うのは主に携帯電話のメールだ。
07年5月末で退職すると公言した小児科医、和久祥三(わくしょうぞう)(41)は「守る会」の活動を知り、もう少し踏ん張ることにした。和久は04年3月、同病院に着任。当時は3人態勢だった。一般外来、救急、入院患者への対応と多忙を極め、超過勤務は月100時間を超えた。
和久は、学会で窮状を訴えたり、県知事に「このままでは現場はもたない」とメールを送った。だが、支援のないまま06年3月には1人減員に。周辺の病院も小児科医の減少が止まらず、1人当たりの負担は増える一方だ。「心が折れてしまったような状態になった」(敬称略)=つづく
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毎日新聞 2008年4月11日 大阪朝刊
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