2008.4.9

医療危機とマスコミの動かし方

昨夜、本田宏氏の講演会「医療崩壊を食い止めろ!」を、東京医科大学病院の臨床講堂へ聞きに行ってきました。私の「そして誰もいなくなる話」を日経メディカルブログで紹介していただいたご縁があり、講演の前後にお会いすることができました。講演の内容は本田氏の著書「誰が日本の医療を殺すのか」に述べられたことを凝縮したものであり、豊富なスライド・ショーを活用しながら、随所に笑いの刺激を散りばめつつ深刻な事態を考えさせるという、見事なものでした。
 講演後の質問の時間に多く出たのは、この問題を世間に知らせるために、現場の人間には何ができるか、つまりマスコミを動かすにはどうしたらいいか、ということでした。私も業界紙やテレビ局で働いたことのある人間ですから、そのためのヒントを提示したいと思いました。
 テレビ局でも新聞社でも、そこで仕事をしているのはふつうのサラリーマンです。問題の掘り起しが仕事であっても、知らないことは書けません。そして常に情報は限られ、時間に追われています。おもな情報源は他社の新聞・雑誌や放送などにならざるをえません。ですから現場のナマの情報は欲しいのですが、入手は容易ではないのです。外部の個人から寄せられる情報というのは、私がNHKにいたときの経験でも、意外なほど少ないものです。
 ですからハガキ1枚でも、提案会議に持ち出されて番組を動かすことがあります。自分の番組を評価してくれた投書は、担当者は宝物のように大事にするものです。圧力団体の投書作戦は無視しても、個人からポツリポツリと寄せられる投書は、気になるのです。あまり長文ではなく、ハガキ程度のほうが、回覧にも便利で効果的だと思ったことがありました。
 今はネットが使える便利な時代です。NHKをはじめ、放送局も新聞社も雑誌社も、たいてい「お問合せ・ご意見」を受け付けるメール・フォームを開設しています。そこへなるべく具体的に現場の問題を知らせてやったらどうでしょうか。興味をもつ担当者がいたら取材にも応じられるように、連絡の方法も、なるべく明示したほうがいいでしょう。すべてがすぐに取り上げられなくても、決して無駄にはならないと私は思います。知人がいないからダメではなくて、知人は呼びかけて作るものだと私は思っています。
 この医療崩壊を救う問題について、私が昨夜強く感じたのは、「みんなに広く知らせれば、きっと勝てる」ということでした。団塊の世代がもっとも医療を必要とする74歳になるまでに、必要な医師を増やすことは、今ならまだ間に合うのです。

Comments: (3)

2008.4.11 01:41:50 ここ : ふと久しぶりに伺いたくなりこの記事を拝見いたしました。
なるほど善いことを教えていただいた…。そうおもいました。ありがとうございます(^-^)
これまでいくつかの新聞のご意見欄やメールフォームに記事を送りましたが、全く返事も反応もなく、大して気に留めてはいただけないのだろうか…と思っていました。
でも、そうではなかったのですね☆
私は現在、看護師をしています。将来の医療がとても心配です。
財に関係なく人として人に尽くせる医療にして行きたいです。
 03:01:00 skyteam :  トラックバックありがとうございました。マスコミの方とゆっくりお話する時間をもてないのと、やはり現場の医療を「自らの意思で語る時間」と、聞いてもらう工夫が足りないのもあるんでしょうが・・・やっぱり難しいのでしょうね。
 10:29:29 志村 建世 : どちらも深夜のお勤めご苦労さまです。右翼の街宣ではありませんが、声の大きいものが勝つ世の中は異常です。黙っていたら伝わりません、無視されるだけです。あきらめないことが大切だと思います。

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