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【社会】

調書引用法 倫理にもとる 『脇甘い』と指摘 奈良漏えい、講談社調査委

2008年4月10日 朝刊

記者会見する講談社の第三者調査委の奥平康弘委員長(右)ら=9日午後、東京都新宿区で

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 奈良県医師宅放火殺人事件の少年の供述調書を引用した「僕はパパを殺すことに決めた」(草薙厚子著)の出版問題を検証する講談社の第三者調査委員会は九日、「出版社と筆者の脇の甘さが(鑑定医逮捕など)公権力介入を招いた。表現の自由に悪影響を与えた社会的責任は大きい」とする報告書を公表した。

 報告書は「供述調書の引用方法などに出版倫理にもとる重大な問題があり、取材源秘匿の重要性について理解がなかった」と厳しく指摘。これを受け講談社は、社内に出版倫理委員会を設置することを決めた。

 第三者調査委は奥平康弘・東大名誉教授を委員長に、作家や法律家ら五人で構成。昨年十二月から取材チームや講談社幹部、鑑定医らから事情を聴き、報告をまとめた。

 報告書はまず、取材時点で鑑定医と筆者らの間に(1)コピー禁止(2)調書通りの引用はしない(3)取材源保護のため事前に原稿を確認する−という「穏やかな約束」があったのに出版はそれに反した、と認定。調書全文をデジタルカメラで撮影し、無断で引用したことを「取材源との信頼関係を悪用ないし誤用した」と批判した。

 また逮捕・起訴された鑑定医の崎浜盛三医師(50)が、事件の背景に少年の広汎性発達障害があることを社会に知らせたいと考えていたことにも触れ「調書を見せたことは後悔しないが、見せる相手を間違えた」という言葉を紹介した。

 その上で「調書を入手した高揚感で関係者が冷静な判断を失った。周辺取材や裏付け取材が不十分で、出版社としてのチェック体制にも問題があった」としている。

 

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