社会に出た年に着工した瀬戸大橋とはともに歩んできた思いがある。取材に飛び回った開通の日からきょうで二十年になる。
久々に倉敷市児島味野の市架橋記念館を訪ね、巨大な海中基礎など工事の写真、説明パネルや橋の模型を眺めた。通行料金からくる使いづらさや建設費の償還ばかりが話題になる昨今だが、日本の技術力に感嘆した日々の高揚感がよみがえった。
記念館では今、二十周年の瀬戸大橋写真コンテストの作品展が開催されている。優美に伸びる連続橋のカーブ、月明かりに浮かぶ橋、橋のたもとの暮らし。どの出品者も丹念に橋の表情を追っている。
作品展とは別に、同市内のアマチュア写真家塚本輝夫さんの個展も開かれていた。着工の時からずっと橋を撮り続けてきたという。工事中の橋脚に上ったり魅力的なアングルを探して歩いた苦労話に、橋を慈しむ心がにじんでいた。
記念館を後に大橋を望める高台に立った。明るいグレーの橋、緑の島々と満開の桜は絶妙の取り合わせだったけれど、通行量が伸びない橋の現状を思うと物悲しくもあった。
橋をバックに遊ぶ数人の幼い子を写した記念館の写真を思い出した。題名には「二十年後の僕らは?」とあった。あの子らが大人になるころ、橋は狙い通りの大動脈になっているだろうか。