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【政策を問う】井堀利宏東大大学院教授「必要な道路」基準明確に
−−福田康夫首相は平成21年度からの道路特定財源の一般財源化を打ち出した。あるべき改革の姿は
「本来、特定財源というのは、優先的に行う必要がある事業に用いるものだ。昔は明らかに不足していた道路だが、整備が進んで状況は変わった。一般財源としたうえで、その中から必要な分を道路建設に充てるのが本来の姿だ」
「一般財源化するにあたっては、人口が今後減るという前提で、事業量がどのくらいか、きちんと精査しなければならない。社会保障費など他の重要な事業との財源配分や厳しい財政状況を考慮し、どこまで必要な道路なら建設するかを決めるのは最後は政治が判断するべきだ」
−−3月末で期限切れとなった道路財源の暫定税率について、存廃についてどう考える
「道路のためではなく、環境問題に対する配慮からガソリンの使用を抑制するために、高めの税率を維持することはあってもいい。暫定税率は廃止し、環境税としてどのくらいの税率が妥当かを議論すべきで、その結果、現在の税率より高い税率になることもあり得る。一定の財源を優先的に環境対策に回し、残りは財政再建にも活用できるようにすればいい。国の厳しい財政状況を考えれば、暫定税率をやめて終わり、というわけにはいかない」
−−今後のあるべき税制改正の方向は
「消費税率の引き上げや、法人税の実効税率引き下げなどの抜本改革が必要だ。少子高齢化や厳しい財政状況などを考えると、消費税率の引き上げは不可欠。その場合、低所得者への配慮をどうするかも考えなくてはならない。生活必需品にかかる軽減税率は、高所得者もその恩恵を受けるので、所得の再分配効果はほとんどない。税額控除など対象を絞った仕組みが望ましい」
−−消費税増税と法人税の実効税率引き下げを同時に実施するのは大企業優遇とみられ、政治的には困難ではないか
「確かに難しいが、企業の国際競争を考えると、実効税率の引き下げを後回しにすべきではない。企業への課税を実質的に負担しているのは労働者。法人税の実効税率が引き下げられれば、企業は配当に多くを回せるようになり、雇用や賃金にもいい効果がある。各税目ごとではなく、総合的な改革が求められている」
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井堀利宏(いほり・としひろ) 昭和49年東大経卒。51年東大大学院経済学研究科修士課程修了。56年米ジョンズホプキンス大大学院経済学研究科博士課程修了。平成9年4月から現職。政府税制調査会委員も務める。岡山県出身。56歳。