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【社会】

【関連】『保険証 届かぬ』 長寿医療 不安鳴りやまず

2008年4月10日 夕刊

 七十五歳以上の高齢者らを対象に今月からスタートした長寿(後期高齢者)医療制度をめぐり、各地の自治体などに「新しい保険証が届かない」「仕組みが分からない」など問い合わせが殺到している。厚生労働省は九日、運営主体の都道府県の広域連合にきちんと対応するよう要請したが、背景には事前の周知不足がありそうだ。 

 東京都福祉保健局によると、都後期高齢者医療広域連合には制度開始前まで一日平均約七百件の問い合わせがあった。そのうち「保険証が届かない」が約50%を占めた。

 届かない主な原因は▽本人が誤って捨てる▽本人が不在だったり転居したりして保険証入りの郵便が戻る−だ。

 立川市は三月、広域連合が用意した約一万三千八百人分の保険証を郵送したが、本人に確実に届くよう「転送不要」となっていたため百五十人分が戻った。転送可として再送したが九日現在、約百人分が届いていない。今後、市役所で保険証を預かっていることを通知、必要に応じて職員が自宅を訪問する。

 一方、同市の説明会で、通院回数が増えると保険料が上がる仕組みに触れると「病院にかかるなということか」「高齢者は死ねということか」の声も。市の担当者は「国の周知が遅く、しわ寄せが自治体に来ている」と嘆く。

 大田区には一日約三百件の問い合わせが相次いでいる。十日、窓口に相談に来ていた女性(78)は「(新保険料の振り込みが)従来の振り込みと二重にならないか聞いた。独り暮らしで制度がよく分からない」と不安げ。男性会社員(59)は「年金のない人から保険料を取るのはおかしい。国会議員に直接言うわけにいかず、区に苦情を言いに来た」。

 神奈川県後期高齢者医療広域連合のコールセンターには、医療機関から「患者の被保険者番号を教えて」との要望が目立つ。新しい保険証を持参せずに受診するケースが多いからだ。同連合は個人情報保護のため患者の氏名、生年月日、住所や性別を聞き、医療機関に電話をかけ直して番号を教えている。同連合は「制度の周知が十分でない表れ。申し訳ない」と陳謝する。

 埼玉県の志木市立市民病院では、新保険証を持ってこなかった患者には診療費の全額を支払ってもらい、新保険証を持ってきた次回に超過分を返すことにしている。「行政は制度の周知に努めているが、お年寄りの患者の大半は内容を理解していないのでは」と懸念する。

 横浜市は、保険料の算定方法などを説明するダイレクトメール約二十九万通を送付。市医療援助課には「保険料が高くなったのではないか」との不満の声が。千葉県の広域連合によると、年金からの保険料引き落とし額を知らせる仮徴収額決定通知書を受け取った高齢者から「算定方法が分かりにくい」などの質問があるという。

 <長寿(後期高齢者)医療制度> 75歳以上(一定の障害がある人は65歳以上)の高齢者を対象に4月に始まった医療保険制度。都道府県内の全市町村が加入する広域連合が運営。従来の国民健康保険などから移行、広域連合から新たな保険証が支給される。地域の医療費を反映して保険料を設定するため、保険料は都道府県ごとに異なる。窓口での患者の負担は原則1割。自己負担を除く医療費は75歳以上の保険料で1割、国民健康保険や健康保険組合など現役世代からの支援金で4割、税金で5割を分担する。年18万円以上の年金受給者は年金から保険料が天引きされる。

 

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