視点・論点

2008年04月09日 (水)視点・論点 「誰でもよかった」 

精神科医 斉藤環 

 このところ、無差別に人を殺す通り魔的な殺人事件が続発し、世間を騒がせています。
 3月23日には茨城県土浦市の荒川沖駅で、24歳の男性が包丁で一人を殺害し、七人を負傷させるという事件がありました。続く25日の深夜には、JR岡山駅ホームで、大阪から家出してきた18歳の少年が、県職員の男性を線路に突き落とし、死亡させる事件が起きています。
 土浦の通り魔殺人の容疑者は、高校を卒業後、コンビニ店員などのアルバイトを転々としていましたが、アルバイトをやめてからはひきこもりがちな生活を送っていました。自宅ではゲームに熱中し、家族ともほとんど会話せず、家庭内でも孤立していたようです。

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2008年04月08日 (火)視点・論点 「チベット騒乱と中国」

東京大学准教授 平野 聡

中国が現在支配している「世界の屋根」チベットで、僧侶の反政府デモをきっかけとした混乱が生じてから約1ヶ月が経ちました。これに対し中国政府は、北京オリンピックを開催するためにも「社会の安定」が必要だと考えて弾圧を強めていますが、国際社会における懸念は強まる一方です。では、何故このような事態になってしまったのでしょうか。その背景には、中国とチベットの愛憎半ばする複雑な歴史的関係があります。

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2008年04月04日 (金)視点・論点 「気候変動・国際社会と日本」

内閣官房参与 西村 六善

最近の温暖化問題の交渉では幾つかの大きな動きがありました。
第一に京都議定書は今年から始まりました。
それから昨年の12月、インドネシアのバリで2013年以降の国際協力の枠組みを作る交渉も始まりました。来年12月のコペンハーゲンでの国連の会議に向けて国際社会は動きだしました。

こういう動きの中で、オーストラリアが京都議定書に参加しました。米国でも嘗てないほどの大きな議論と動きが始まっています。州や地域では温暖化ガスを規制する動きが生まれています。 米国の連邦議会でも大きな議論が始まっています。3人の大統領候補はこの問題に新しい積極さを打ち出しています。

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2008年04月03日 (木)視点・論点 「踊り場の日本経済」

東洋大学教授 中北 徹

景気が踊り場に差し掛かっています。4月1日発表の日銀短観では経営者のマインドの急激な悪化がうかがえます。また、企業の資金繰りも厳しくなっていると伝えられます。一方、政治のねじれから、日銀総裁の人事、暫定税率の存廃など、最重要問題について国家の意思が決まらないという閉塞状況もあるでしょう。そこで、今日は、景気の現状をどう考えるか、その主な原因、ありうべき政策などについて、日銀総裁問題にも触れながら、述べてみたいと思います。

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2008年04月02日 (水)視点・論点 「法廷に吹く風・裁判員制度」

作家 佐木 隆三

裁判員制度は、二〇〇九年五月までに実施されることになっており、あと一年ほどに迫ってきました。その目的は、「司法に国民の健全な社会常識を反映させる」というものです。わたしは四十年近く、刑事裁判を傍聴・取材して、小説やノンフィクションを書いてきました。そもそも刑事裁判は、違法行為のあった人について、検察官が証拠をあつめたうえで、裁判所に処罰を求めて始まります。

いわば人間のマイナスの営み、社会の病としての犯罪に、公開の法廷で光が当てられるのです。そうであれば、裁判を通じて知り得たことを、つとめて正確に人々に伝える。わたしは自分の裁判傍聴をそのように考えて、文筆活動をつづけてきました。

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2008年04月01日 (火)視点・論点 「租税教育の重要性」

放送大学学長 石 弘光

 きょうは、租税教育の重要性についてお話したいと思います。
言葉には様々な語感がありますが、おそらく税とか税金とかいうのはあまりいい印象を人々に与えていないと思われます。多くの人は、できたら税金の話は避けたいと考えられているかもしれません。しかしこの世の中で、これほど必要なものはないのです。国や地方自治体は、われわれ国民や住民のためにさまざまの公共サービスを提供してくれています。小中学校の義務教育、医療・介護などの社会保障、道路、橋などの公共事業、消防、警察など、私たちが日常的な生活をするための共通の公共サービス、社会資本を、ほとんど無料で提供してくれます。さらに、国防、司法、外交など直接に目に付きませんが、日本が国家として成立するための基礎となる公共サービスも、作り出しています。もしこのような公共サービスが存在しなければ、われわれの日常生活や社会そして国自体が成り立ちません。

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2008年03月31日 (月)視点・論点 「労働者派遣システム再考」

政策研究大学院大学教授 濱口桂一郎

現在、労働者派遣事業の在り方が、労働政策の一つの焦点となっています。これは、かつては労働者供給事業と呼ばれ、ピンハネなど多くの弊害が指摘されていました。終戦直後に原則として禁止されたのですが、1985年に労働者派遣法が制定され、一部の専門的業務についてのみ認められ、その後段階的にその対象を拡大してきました。
1999年には原則としてどの業務でも派遣事業を行ってよいこととされ、2003年には製造業にも拡大されています。しかしなお経営側や政府の規制改革会議は、事前面接の解禁や派遣先企業の直接雇用申込み義務の撤廃など、さらなる規制緩和を求めています。

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2008年03月28日 (金)視点・論点 「沈みゆく島 ツバル」

アルピニスト・野口 健

 アルピニストの野口健です。
 この3月上旬にツバルという国に行ってきましたけれども、これは南太平洋の島なんですね。なぜ、私がそのツバルに行ったかということですけれども、日頃アルピニストとしてヒマラヤに行っているわけですね。この間で、僕、恐らく37回ヒマラヤに行っているんですけれども、こうヒマラヤに通っているうちに、非常に最近気になったのが、気候変動、温暖化によってヒマラヤの氷河が溶けていくと。ヒマラヤの氷河が溶けていくことによって、ネパール、ヒマラヤ地域では今、洪水が起きているわけですけれども。そのもう片一方で例えば、ツバルという国は、温暖化によってまず真先に沈んでいくだろうと言われている島なんですね。その海面上昇によって真先に沈んでいくだろうと言われている島ですけれども。

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2008年03月27日 (木)視点・論点 「検索から思索へ」

作家 藤原智美

 SF作家のアーサー・C・クラークが亡くなりました。大変惜しいことなんですけども、彼の一番有名な作品というと、1968年に映画化された『2001年宇宙の旅』というのがありましたよね。その中で、HALという登場人物がいます。登場人物といっても、これは実はHALというコンピュータなんですね。
で、このコンピュータが人間に反乱を起こすわけですね。コンピュータが反乱を起こす? つまりそれはコンピュータが自立した思考力をもったり、そして、何より反乱を起こしたいという気持をもってしまうんですね。今なら考えられないんですが、その当時は、もしかするとコンピュータ社会、このまま行くとそういったこともあるかもしれないな、そういう気分が当時はありました。

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2008年03月26日 (水)視点・論点 「台湾 政権交代」

防衛研究所主任研究官 松田康博

(1)国民党・馬英九候補の圧勝

3月22日に、台湾で第4回目の総統直接選挙が行われ、野党中国国民党の馬英九・前台北市長が、221万票、約17%の大差で、与党候補の謝長廷・元行政院長を退けて初当選し、2度目の政権交代が実現しました。投票率が76%を越えた上での大勝利ですから、台湾社会における馬英九氏への期待は非常に高いものがあると考えてよいでしょう。馬英九氏は、香港生まれで、中国人としてのアイデンティティが強いと見られていました。またこれまで中国との関係改善を訴えてきました。
馬英九氏の当選により、過去8年間、台湾独立派である民主進歩党の陳水扁総統が進めてきた、台湾アイデンティティを高揚させて、劣勢を跳ね返す選挙政治は、終わりを告げました。今回国連加盟の是非を問う住民投票も、投票率が基準に達しなかったため、成立しませんでした。なぜ、このような結果になったのでしょうか。それは台湾アイデンティティが弱くなり、台湾が将来中国との統一の方向に向かうことを意味しているのでしょうか。

 

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