人が汚した湖水を自然が復元――サミット開催地、洞爺湖町長に聞く
インタビューに応じる長崎洞爺湖町長
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地球温暖化問題が主要議題となる北海道洞爺湖サミット。開催地となった洞爺湖町はかつて、人が汚した湖水を火山灰という自然の力が復元した歴史を持ち、いまは豊かな自然と人、さらに火山とも共生できる街づくりを目指す。7月7日のサミット開催を機にさらなる環境タウンへの脱皮を目指す長崎良夫町長に聞いた。
――北海道洞爺湖サミットまで5カ月を切りました。環境の視点で見て、町のどういう点が評価されたのでしょうか。
わが洞爺湖町には海、火山、洞爺湖という自然の風景に加え、温泉もあります。こうした豊かな自然に恵まれていることと、山の上には国際的な会合を持てるザ・ウィンザー洞爺という施設があったことが最終的な決め手になったと考えています。
――自然の豊かさ、という点では世界遺産になった知床もありますし、北海道全体がとても自然豊かです。その中でも洞爺湖町ならではの特徴とは何でしょうか。
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有珠山・金比羅山火口群。その先には洞爺湖と中島が望める |
昭和40年代、洞爺湖町の近くで操業していた硫黄採掘鉱山が、硫黄を含む水を大量に川に流し、その水が湖に流れ込みました。硫黄はとても酸度が強く、湖の汚染が急速に進みました。しかし、結果的にですが、その汚染は1977年の有珠山噴火で発生した大量の火山灰で食い止められました。
その火山灰はアルカリ性だったため、結果的に湖水を中和することにつながりました。実は洞爺湖の水質改善のために、北海道のお金をもらって、中和剤を湖水にまく中和作業を進めていたのですが、なかなか改善しなかったのです。
――というと、人の手によって汚染された洞爺湖が、人の手では回復を果たせず、結果的に自然の力で改善したということですか。
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洞爺湖町役場入り口にはG8各国とEUの旗が掲げられている |
結果的にそうなりましたね。ただ、噴火による家屋や土地などに対する甚大な被害は、その一方で忘れてはいけない事実です。
そのような歴史を持つ洞爺湖。ウィンザーから眺める洞爺湖の風景には息を飲みますよ。そしてウィンザーから逆方向からは内浦湾も一望できます。
今は、サミットの後が怖いですね。サミット開催地として注目を集め、少しずつですが町を訪れる観光客も増えてきています。ようやく2000年の噴火前の水準まで回復してきました。サミットが終わった後、洞爺湖を忘れられないようにしないといけませんね。
――町長室の入り口に大きな魚拓が飾ってあります。この魚は洞爺湖で獲れたものですか。
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「洞爺湖ではこんな大きなサクラマスが獲れるようになった」 |
2007年の春に洞爺湖で獲れたサクラマスで、体長80センチ以上あります。かつて水質汚染が進んだときは、獲れなかったのが、今ではここまで成長しています。最近ね、洞爺湖のサクラマスが有名になってきまして、苫小牧のある業者が、このサクラマスを使って燻製にする商品化の事業化調査に乗り出しています
――環境面で町独自にどんな取り組みをしていますか。