米聖火リレー、隠密裏にルート変更、閉会式なく空輸2008年04月10日10時25分 【サンフランシスコ=堀内隆】ロンドン、パリで妨害行為の的になった北京五輪の聖火をどう守るか。9日に北米唯一の聖火リレーが行われた米サンフランシスコ市当局の答えは「ルートを丸ごと変更する」だった。聖火が新ルートに移った後も、元ルートの観客には一切、知らせない「隠密作戦」。市民からは不満の声も上がった。
開会式場は大リーグ、サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地である野球場「AT&Tパーク」そばの入り江。当初の予定では、聖火は海岸沿いを往復する約10キロのコースだった。他の都市の数分の一の距離で警備しやすい大通り。「混乱を織り込んだコース設定」と誰もが思っていた。 ルート上には朝10時ごろから中国に抗議するチベット系団体や、中国を擁護する地元の中国系アメリカ人のグループが集まり、横断幕や旗を掲げて気勢を上げた。 ルートは予告なしに変更された。昼すぎに開会式が始まると、聖火と走者は近くの倉庫に。「聖火が消えた」。騒ぎが広がる中、約40分後にチベット人の間に携帯メールが出回った。「別の通りで聖火リレーが始まった」 そのころ聖火と走者は大型バンで約4キロ離れた通りまで搬送され、厳重な警備の中、観光名所のゴールデンゲートブリッジ(金門橋)に向かってリレーを進めていた。 携帯電話に届く聖火の位置情報を元に、チベット人たちは後を追い、間に合った一部が歩道上から「中国は恥を知れ」などと叫び声を上げた。目撃者によると、走者の1人が途中でチベットの旗を取り出し、その場で聖火を取り上げられたという。 聖火が別ルートに向かった後も、元ルートの警官隊は動かない。そればかりか、わざわざ配られたヘルメットをかぶり始めた。明らかに「おとり」だった。 公式ルートと別に、周到に準備された「別ルート」だったことは間違いない。同市のニューソム市長は地元紙に「市警本部長と相談してルート変更を決めたのは午前11時ごろだった」と語った。 混乱を警戒して、少なくとも3人の走者が当日までに辞退した。 賛成派と反対派双方の裏をかいた結果、聖火リレーは大きな衝突のないまま終わった。 とはいえ、聖火を待ちわびた沿道の一般市民は「朝から待っていたのに」と落胆を隠さなかった。同市議会のペスキン議長は「秘密裏に進める市長のやり方は中国と一緒」と批判。他方、在米チベット人組織で構成する「チーム・チベット」は閉会式を中止に追い込んだとして「勝利宣言」を出した。 聖火はリレー終了後、ただちにサンフランシスコ国際空港に移され、次のリレー開催地であるアルゼンチンのブエノスアイレスに向かった。 PR情報国際
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