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【よりよい医療のために】「事故調」を考える(下)現場の医師に不利益か (2/2ページ)
医療事故調で調査をした結果次第で警察に通知されるのであれば、このケースのようになるかもしれない−そう考える医師は少なくない。
これに対し、業務上過失致死罪の容疑者として警察の捜査を受けた循環器専門の医師は「現状では、遺族が家族の死因に納得のいかない場合、医学知識の全くない警察の捜査に頼るしかない。真相究明にはまず専門家が調査を行うべきで、その中立性の担保には国の機関が必要」と主張する。
同医師は平成19年2月から7月まで計20回にわたり警察と検察の取り調べを受けた。嫌疑不十分で不起訴となり、遺族の求めによる検察審査会でも不起訴相当とされた。この経験で、司法解剖と警察の取り調べの両方に問題があることを痛感したという。
臨床経験の全くない法医学者が単独であり得ない死因とストーリーを断じる司法解剖。時間の大半が医学知識や医療内容の説明にあてられる警察官の取り調べ。臨床医同士ならすぐに理解できることでも、医学知識のない警察官には一から説明せねばならず、医療の妥当性を理解しても、あくまでも立件送致が仕事であるという警察のスタンスに、真相究明システムの不備を感じたという。
「いま真相究明機関を作らないと、今後10年はできないだろう。医師の不当逮捕を防止するのみならず、医療事故の再発を防止する意味でも、まずシステムを作り上げて真相を真ん中におき、医療側と患者が向き合うことが重要」と訴えている。(平沢裕子)