「白い上着を着た男がスーツ姿の男性を突き落とすのを見た。その瞬間に怖くなって逃げた」「『突いた』『突いた』という声を聞き、恐ろしくなって思わずホームの階段へ走った」「恐怖で震えが止まらなかった」
JR岡山駅で三月二十五日深夜、山陽線ホームから突き落とされた男性が列車にはねられ死亡するという、何とも痛ましい事件が発生。約二十分後には社会部記者たちが駆け付けた。泣き崩れたりショックでうずくまる女性、青ざめて立ち尽くす人々…。騒然とする現場での取材が続いた。
それにしても不可解で許せない犯行だ。殺人容疑で送検された大阪府の十八歳少年は「人を殺せば刑務所に行ける。誰でもよかった」と、無差別な犯行を供述。もしかすると犠牲になっていたのは自分だったかもしれない―そう考えた列車利用者は多いのではないか。
「新幹線ホームのように安全柵をつけては」。利用者からはそんな声も上がっている。人の転落を想定した安全対策として、鉄道各社は柵やホーム下への退避スペース設置などを進めている。JR岡山支社によると、在来線への柵の設置は列車のタイプがさまざまで車両ドアの位置が統一されていないとの理由で、また、退避スペースは強度の関係で、いずれも設置は難しいという。
だが、「自分でわが身を守るにも限度がある」といった声が少なからずあるのも事実。今回のような事件はJRも想定外だということは理解できるが、現状では、再びこのような事件が起きないことを願うしかないということなのだろうか。
(社会部・南條雅彦)