ホーム > きょうの社説


2008年4月10日

◎日中韓協力提唱 黄砂、漂着ごみ対策に本腰を

 北國新聞社など日本海沿岸の地方紙で構成する北東アジア交流プロジェクト訪韓団に対 し、韓国の柳明桓外交通商相が黄砂や漂着ごみについて、日中韓三国による協力体制の構築を提唱した。能登半島への漂着ごみの九割は中国、韓国が発生源とされる。当事国首脳からの願ってもない提案であり、協力体制の組織づくりをぜひ実現させてほしい。

 黄砂に対する取り組みも喫緊の課題だ。黄砂には中国の工場や車の排気ガスから放出さ れた窒素酸化物や硫黄酸化物が吸着しており、中国国内の大気汚染の悪化に伴って、健康被害の拡大が懸念されている。日韓が結束して中国に砂漠化や大気汚染対策を求めていく必要がある。

 日本海側の海岸に漂着するごみは年々増加の一途をたどり、その処理費用が自治体の負 担になっている。七尾市の東部中生徒が三年前から能登半島の二十カ所で漂着ごみの「国籍」を調べたところ、中国と韓国でほぼ九割を占めた。今冬は日本海側に濃塩酸入りのポリ容器が二万三千個流れ着き、石川県内でも千百二十個の漂着が確認されている。これらの三分の一近くにハングルの記載があり、韓国領海で不法投棄された可能性が高い。漂着ごみの実態を韓国、中国側に知らせ、取り締まりの強化を求めていくために日中韓の協力が欠かせないのである。

 黄砂については、日本以上に韓国の被害が深刻で、学校の閉鎖や工場の操業停止が珍し くない。韓国の研究機関は、黄砂による年間の経済損失を約五千八百億円、健康被害を百八十万人と推定しており、日本でも黄砂によるぜんそくや花粉症の悪化が問題になっている。

 中国は独自に、砂漠化対策とともに発生のメカニズムや大規模な科学調査を行っている とされるものの、日本、韓国、モンゴルとの間で計画されていた黄砂の監視プログラムから一方的に離脱を宣言するなど、周辺国との協調には消極的といわれる。気象情報を「国家機密」と考えているからだといわれるが、日韓が粘り強く中国を説得し、黄砂対策を日中韓三国の問題として認識させていかねばならないだろう。

◎福田・小沢党首討論 対決の道進むだけなのか

 福田康夫首相と小沢一郎民主党代表による党首討論は、政治停滞の非を互いにあげつら う印象が強く、前回と同様に議論はかみ合わなかった。政党が政権を取るために戦術を駆使するのは当然とはいえ、衆参両院の意思が分断された状況で与野党が対決路線を走るだけでは、国民は迷惑を被るばかりである。与野党の党首が大局的な見地から歩み寄りの可能性を見いだすことも党首討論の意義といえるが、そういう姿勢があまり感じられず、中身も乏しかったのは残念である。

 両党首の決断と指導力で実現の可能性があるのは、道路特定財源の一般財源化である。 福田首相の一般財源化方針が政府・与党内で正式決定されたものなら、民主党も大賛成であり協議に応じる考えを小沢代表は表明した。自民党が一般財源化を総務会で党議決定するのは困難とみた上での発言の可能性もあるが、今は道路特定財源の一般財源化という歴史的な政策転換を図る好機である。

 党首討論では、国会運営に苦労する福田首相の愚痴めいた発言が目立った。首相の逆質 問に対する小沢代表の回答は理念と原則の発表にとどまり、暫定税率廃止に伴う歳入不足の対処策などに具体的な答えは出されなかった。

 与野党の政策協議に期待が持てないとなれば、政府・与党としては首相問責決議を恐れ ずに、衆院での再議決権を繰り返し行使するほかないのかもしれない。そうした政治の是非を最終判定するのは国民ということになるが、与野党はけんかばかりではなく、意見が一致してすぐ決着できるもの、協議で妥協が可能なもの、妥協不可能で選挙に問うほかないものというふうに、政策課題を仕分けする必要もあるのではないか。

 名宰相といわれた自民党の先達は「民主主義の根底にある思想は寛容であり、争うべき は争い、妥協すべきは妥協して国策を遂行する。その信念があってこそ、国家国民のための民主政治になる」という趣旨のことを述べている。そのような政治を現在の与野党政治家に望むのは、それこそ「無い物ねだり」なのだろうか。


ホームへ