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Jパワー株問題 政府「外資に閉鎖的」批判どうかわす?

2008年04月06日

 公の秩序の維持を妨げる恐れがある――。経済産業省と財務省は、英国の投資ファンドによる電力卸Jパワー(電源開発)株の買い増しを、こう認定した。両省が投資計画の変更か中止を初めて勧告する方向となったが、勧告には「外資に閉鎖的」という批判に耐えうる説明が必要だ。

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TCIによる株買い増し申請の今後の流れ

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外資系投資ファンドの株買い増しに揺れるJパワーの佐久間ダム=浜松市天竜区、同社提供

 問題となっているのは、Jパワー株の9・9%を持つザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI)の申請。両省は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、20%までの買い増しを求めるTCIの申請を3カ月間、審査してきた。

 両省が「懸念のある投資」と判断したのは、Jパワーが国のエネルギー政策の根幹を担っているためだ。電力インフラを多数保有する同社の経営にTCIが影響力を強めれば、卸電力料金の値上げや、資産売却、設備投資計画の遅滞などの懸念が生じ、「電力の安定供給に支障が出かねない」(経産省幹部)という。

 Jパワーは、青森県で大間原発の建設を計画している。使用済み燃料を再処理して使う「プルサーマル計画」に基づく最新型で、国の原子力政策の一翼を担う。甘利経産相は「これが滞ると、『日本はきちんと平和利用に取り組むのか』ということになる」と警戒感をあらわにする。

 TCIは、政府の懸念に対し、「原発や送電網の経営については、株主総会で株式の10%以上の部分の議決権を行使しない」と提案。3月下旬には、勧告した場合、日本への制裁を求める書簡を欧州委員会に送付。法的措置も辞さない構えだ。

 両省は11日からの関税・外国為替等審議会の外資特別部会に諮り、勧告を最終判断する。ただ、政府は対日投資への悪影響を恐れ、羽田・成田両空港への外資規制を先送りしたばかり。勧告に踏み切れば、「外資に閉鎖的」との批判が再燃し、株式市場に影響を与える可能性もある。

 経済協力開発機構(OECD)の投資ルールは「国の安全保障」を担う事業への外資規制を認めている。ただ、投資家を納得させられるだけの説明がないと、対日直接投資を拡大するという政府方針に冷や水を浴びせかねない。

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