舛添厚労相、「国の形を変える必要」

 厚生労働省はこのほど、「安心と希望の医療確保ビジョン」会議を開き、地域医療に取り組む医療機関の院長から意見を聞いた。席上、舛添要一厚生労働相は地域医療の在り方について、ネットワークや連携を重視する考えを改めて強調し、「医療も国の形を変える必要がある。47都道府県では医療資源の密度を緊密化できない。国の形にかかわるような大掛かりな仕掛けが必要」と述べ、現在の保健医療圏などを見直す必要性を示した。

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 この会議は、長期的な視点から日本の医療の課題を整理する目的で、舛添厚労相が今年1月に設置した。
6回目を迎えた今回のテーマは「地域医療」で、小川克弘氏(むつ総合病院院長)、草場鉄周氏(北海道家庭医療学センター理事長)、須古博信氏(済生会熊本病院院長)が意見を述べた。

 小川氏は「青森県下北圏域における地域医療に関する取り組み」と題して、むつ総合病院と近隣の医療機関との連携や医師の確保策などを紹介した。

 むつ総合病院は本州北端の「むつ医療圏」の中核病院で、病床数は486床と同医療圏で最大規模。慢性的な医師不足に悩まされている同医療圏における取り組みとして、小川氏は▽持続可能性の薄い医療機関は、病院から診療所への転換を図る▽隣接する大間町の「大間病院」(60床)に勤務する医師の負担を軽減するため、近隣の診療所を休・廃止し、大間病院に医師を集約する▽むつ総合病院は定期的に大間病院を支援していく―などを挙げた。

 小川氏は、かかりつけ医や総合医など患者の心身の状況を全般的に把握する「一般医」を育成することや、勤務医の負担を軽減する必要性を強調。勤務医の負担軽減の方法として、「医師がやらなければならない仕事は限られているので、スリム化が必要。認定看護師などに医師の業務を委譲していくべきで、現在の医師法を改正する必要がある」と述べた。

 続いて、草場氏が「若手家庭医の主張」と題して、医療法の中に「総合科」を位置付ける必要性を訴えた。同氏は京大医学部を卒業後、専門医よりも家庭医の道を選んで北海道の病院などで研修を受けた日々を振り返り、「何よりもつらいのは、患者さんから『先生のご専門は何ですか』と聞かれた時」と明かした。
 同氏は「標榜(ひょうぼう)科名はやはり内科、小児科になってしまう。患者への説明にも困ることがしばしばあり、学術的にも法的にも認知されていない現状がある」と述べ、家庭医療(総合科)専門医の養成プログラムの確立や、確かな指導力を持つ家庭医療(同)指導医の養成の必要性を訴えた。

 須古氏は「地域完結型医療の実現を目指して」と題して、熊本の連携医療の現状や今後の課題などについて意見を述べた。同氏が院長を務める済生会熊本病院(400床)は、熊本の中核医療を担う急性期病院で、回復期リハビリテーション病院と連携する「地域連携クリティカルパス」でも有名。
 同氏は今後の病診・病病連携の課題として、「連携ネットワークが質を上げているのか詳細な検討が必要だ」と指摘。具体的には、▽情報の共有化と発信▽連携データの細分化と分析▽教育や研修の受け入れの促進▽相互評価と協議の場の企画や運営―を挙げた。
 同氏は、連携する医療機関がそれぞれの機能を明確化して自院の情報を発信する必要性を強調し、相互の連携によって医療の効率化を図ることができるとした。

■ 舛添厚労相の意見
 
ヒアリング終了後、舛添厚労相が意見を述べ、認定看護師などに医師の業務を委譲する必要性を指摘した小川氏に対しては、医師と看護師らとの役割分担の範囲を検討する研究会を発足させることに意欲を見せた。

 また、医療法の中に「総合科」を位置付ける必要性を主張する草場氏に対しては、「ダブルトラップで総合科と家庭医があっていい。ただ、標榜科の名前はさらに検討が必要だ」とコメントした。

 地域連携による医療の効率化の必要性について語った須古氏に対しては、次のように述べた。
 「医療資源がある熊本だからできた気がする。ないところではできない。医療資源の適正な再配分が国としてできるかと言えば、無理のような気がする。九州の場合、佐賀はどうか、福岡はどうか、長崎は、離島を含めてどうか。つまり、医療も国の形を変える必要がある。こう言うと道州制みたいな話になるが、47都道府県では医療資源の密度を緊密化できない。ちょっと国の形にかかわるような大掛かりな仕掛けが必要かなという感想を抱いた」


更新:2008/04/09 21:03     キャリアブレイン

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08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。