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2007.6.9(土)更新
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】
「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!
ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
舞台は19世紀末のロンドン。天才マジシャンのロバート・アンジャー(ヒュー・ジャックマン・右)とアルフレッド・ボーデン(クリスチャン・ベール・写真下)がトリック・バトルを展開する!
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
ボーデンは、途中から元アンジャーのアシスタントであるオリヴィア(スカーレット・ヨハンソン・右)と組むことになる
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
シルクハットは劇中の大事な小道具のひとつ
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
水中脱出のマジックは、一歩間違えれば溺死してしまうという命を懸けたトリックに挑まねばならない!
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
アンジャーの妻も、水中脱出の段取りの手違いで溺死してしまう。その原因はボーデンにあったのだ!
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
水中脱出のマジックで、ボーデンがアンジャーの妻の手をロープで結ぶ際に、過ちを犯してしまう
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
鳥を使ったマジックが何度も登場する。この鳥が本作でのアンジャーの運命を暗示するメタファーとなっている。アンジャーたちと共に仕事をするカッター役に名優マイケル・ケイン(左)
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
スカーレット・ヨハンソン扮するオリヴィアの存在感が映画に華を添えている
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
エジソンと肩を並べる科学者ニコラ・テスラ役にデビッド・ボウイ
【ネタバレ徹底紹介※映画未見者はご注意!】「プレステージ」を観たあなたにだけ教える!ラストの「まさか!」と、その謎を大検証!
光が織り成すマジックのイリュージョンに感嘆!
■「プレステージ」は6月2日(土)より全国公開
[c]2006 TOUCHSTONE PICTURES All rights reserved.


STAFF&CAST
監督・脚本:クリストファー・ノーラン 原作:クリストファー・プリースト 出演:ヒュー・ジャックマン クリスチャン・ベール スカーレット・ヨハンソン マイケル・ケイン(2006米/ギャガ)130分
■6月9日(土)より、日比谷スカラ座他全国ロードショー
>> 公式サイト
予告編[プレステージ]
>> 「プレステージ」上映スケジュール
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なるほど! 思わずうなる、脚本家・中村樹基が
ひもとく「プレステージ」のトリック


 「プレステージ」をご覧になって、「あのシーンはどうなってる?」、「あのシーンの意味は?」と様々な疑問が浮かんだことでしょう。なにしろ「プレステージ」は、オープニングから驚愕のラストまで、映画自体が壮大なマジックなのですから。
 そこで、映画のシーンの順に、「プレステージ」の謎を大検証しようではありませんか? ただし、この先、強力なネタバレが含まれます。映画未見の方には絶対にオススメできませんのでこの先は読まないように。では、早速解説スタート!

●タイトルバックのシルクハットの謎
 マジシャンの象徴であるシルクハット――。それがいくつも転がる印象的なシーンから「プレステージ」は始まる。このシルクハットは、テスラの瞬間移動装置の実験結果であり、冒頭から、映画の最も重要な種明かしを見せているのだ。

●アンジャー殺しの裁判の謎
 本作は、『アンジャー(ヒュー・ジャックマン)殺し裁判』により、ミステリー色をおびる。ボーデン(クリスチャン・ベール)がステージ下に通じるマジック用の穴の下に水槽を動かし、アンジャーを溺死させたと疑われているのだ。この裁判自体は、原作『奇術師』にはない、映画オリジナルのエピソードで、法廷の傍聴席にファロンとボーデンの娘がいるので、お見逃しなく。

●盲目のアシスタントの謎
 アンジャーの【新・瞬間移動】のバックステージにいる、どこか不気味な盲目の老アシスタントたち。これも映画の脚色の一つで、マジックのトリックを裏方にも見せないためである。舞台下の水槽にもう一人のアンジャーが溺れ死ぬところなど、誰にも見せられるはずがない。

●アンジャーとボーデンの日記の謎
 ボーデンが獄中、弁護士から渡された【アンジャーの日記】を読み、アンジャーがアシスタントのオリヴィアに盗ませた【ボーデンの日記】を読むという回想で、物語が進行していく本作。「メメント」で前代未聞の回想映画を送り出したクリストファー・ノーラン監督らしさが出た構成となっている。が、原作も、ボーデンとアンジャーの日記を読み、真相究明する構成になっており、それを倣ったのだろう。

 さて、【ボーデンの日記】は、アンジャーの手に渡ってもよいように書かれたウソを含むものであり、一方、【アンジャーの日記】は、コールドロウ卿(実はアンジャー)が書いたダマシの日記だ。そう、ボーデン、アンジャーはそれぞれ、日記に翻弄されることになる。

●ボーデンの正体の謎
 ボーデンは秘密を持って生まれてきた。彼は【一卵性双生児】だったのだ。この双子のトリックを使い、【瞬間移動】を行った。カッターはそれを見抜いたが、アンジャーは「単純すぎる」と、双子説を否定し、深みにはまる。ボーデンは双子の秘密を、双子の片割れが指を失えば、もう片方も指を失うまでして、隠し抜き、人生をマジックのために犠牲にしたのだ。
 ちなみに、アンジャーと出会うアシスタント時代、「俺には誰にもまねできないトリックがある」があると豪語するのは、双子を利用した【瞬間移動】のトリックの伏線である。

●チャン・リン・スーの謎
 金魚鉢のマジックを披露する中国人マジシャン、チャン・リン・スー。チャン・リン・スーは実在のマジシャンで、しかもアメリカ人が中国人の扮装をしていたのだ。彼は常にその扮装でデタラメな中国語を話し、ボーデンが指を失う【銃弾つかみ】の失敗で死亡した。その検屍解剖の時、はじめて正体がばれたとの伝説も残る。また、【銃弾つかみ】での死は、実は失敗ではなく、女性アシスタントとの失恋が原因の自殺との憶測まで飛び出した。

●アンジャーの正体の謎
 アンジャーは貴族の出で、マジック収集家の大富豪コールドロウ卿である。原作によると、アンジャーは次男で家督相続ができず、駆け出しのマジシャンとして貧しい生活を送る時期があった。が、兄の死により、家督相続し、マジシャンとしても成功する。映画では、妻・ジュリアとの会話の中、「実名で舞台に出たら、家名に傷がつく」という台詞で匂わせ、アンジャーの芸名、『偉大なダントン』はそこから生まれた。また、かたくなに芸名を変えないのは、亡き妻ジュリアへの愛情の証であった。

●ジュリアの死の謎
 アンジャーの最愛の妻、ジュリアはボーデンのロープの結び方が原因で死亡した。葬式に訪れたボーデンが、結び方について覚えてないのはウソではなく、双子の片割れの方が結んだので、実際わからなかったのだ。
 ジュリアの死が起となり、二人の確執が生まれ、アンジャーとボーデンが、まるで似てない双子のように同じ運命をたどることになる。アンジャーが妻を失えば、ボーデンも妻・サラを自殺で失う。ボーデンが指を失えば、アンジャーは片足が不自由になり、カッターに、「ボーデンにはかまうな」と忠告されながらもかまってしまうアンジャー、同じようにファロンに、「アンジャーにはかまうな」と言われてもボーデンはアンジャーをかまってしまい、それぞれ悲劇を迎える。

●【消える鳥カゴ】の謎
 瞬時に、小鳥が鳥カゴごと消える【消える鳥カゴ】。サラの甥が「違う鳥だよ」とそのトリックを見破る。よく似ている鳥であるが、消えた小鳥と現れた小鳥は別の鳥だと見抜いたのだ。消された小鳥は、「手を汚す」、つまりマジックの犠牲となって殺されており、「消えるものには誰も気にしない」のだ。そして作業場にずらりと並ぶ鳥カゴの鳥たちは、マジックのため殺されるのを待つ存在であり、ラスト、(暗くてよく見えないが)廃劇場地下の無数の水槽に浮かぶ溺死したアンジャーたちを暗示している。

●サラに見せたマジックの謎
 ボーデンは、サラの気を引こうと、サラの部屋の前で去ったと見せかけて、部屋の中にいるマジックを見せる。たぶん、ボーデンがサラと話して注意を引いている間に、双子の片方がサラの部屋に忍び込み、ボーデンはそのまま去るというトリックなのだろう。つまり、【瞬間移動】の原型をサラに披露したのだ。

●ファロンの謎
 トリックメーカーのファロンは、ボーデンの双子の片方が変装したものだ。が、双子の兄がボーデン、弟がファロンと決まっているのではなく、双子が交替でボーデン、ファロンとなる。仮に、表舞台に立つ者、裏方の役割を固定すると、裏方が必ず不満を持ち、双子といえども関係にヒビが入る。そうならないようにする、すばらしい工夫だったのだ。

●サラとの会話の謎
 「愛してる」「今日はウソ」とたわいのない会話をするボーデンとサラ。実はこの台詞に、サラが薄々、双子の秘密に気づいてるのを示している。
 双子の間で、若干、性格の違いがあり、片方は温厚であるのに対して、もう片方は攻撃的である。また、サラ、オリビアとの肉体的交渉を持つ役割は決まっている。女を共有し、できた子が双子のどちらの子だと問題になるのを防ぐためだ。台詞からわかるが、死刑になるのはオリビアを愛する片割れのほうである。

●ボーデンはウソをつかないの謎
 ボーデンはマジック以外では、決してウソをついてはいない。ジュリアの縄の結び方に対してもアンジャーに真実を話し、娘に「動物園に連れて行く」と約束すれば、ファロンに扮装をとかせ、ボーデンとして動物園に連れて行かせる。そして、処刑の前、「必ず、迎えに行く」と約束し、絞首刑に処せられるも、ファロンに、ボーデンとして迎えに行かせている。ウソをつかないということは並大抵のことではできない。

●アンジャーの替え玉、ルートの謎
 アンジャーの【新・瞬間移動】の替え玉として、オリヴィアに紹介される売れない役者のルート。「手を加えれば、兄弟になる」とカッター言われたアンジャーは、「兄弟はいらない。僕自身がいる」と言う。皮肉にも、テスラの装置により、アンジャーはその通りの運命をたどることになる。
 また、ルートが脅迫をはじめるのが異常に早い、とカッターが驚くが、これは酒場でボーデンがルートをそそのかしたためだ。

●オリヴィアのスパイの謎
 アンジャーからボーデンのスパイをするように言われるオリヴィア。実はアシスタントを使ってマジックのトリックを盗ませるのは史実として、よく行われていたようだ。本作と同時代、アメリカのマジシャン、ハリー・ケラーは【空中浮遊】の舞台裏よく知るアシスタントを雇い入れて、そのトリックを盗んだそうである。また、アンジャーとボーデンが知り合う、ミルトンのアシスタント時代。カッターから、「ボーデンは、ミルトンのライバル・マジシャンのもとから来た」と聞いたアンジャーが、「ミルトンのトリックが盗まれる」と心配するのもムリはないのだ。

●テスラの謎
発明王エジソンと確執のあるニコラ・テスラも、もちろん実在の人物。直流電流システムを推し進めようとするエジソンに対し、ニコラは交流電力を推した。
 本作では博覧会で、エジソンの配下がヤジを飛ばしたり、テスラの研究所に押し入ったりするが、史実として、こんなエピソードもある。当時、アメリカにおける処刑装置の相談をされたエジソンは、敵のテスラの交流電力による電気椅子を薦めたという。実は、電気椅子のむごたらしさに人々が交流電力に反感を覚えるだろうと、目論んだのだった。

●テスラの瞬間移動装置の謎
 アンジャーはボーデンのウソの日記に踊らされ、はるばるアメリカに渡り、テスラに瞬間移動装置の開発を依頼する。アンジャーのシルクハットを実験台にして装置に置くも、激しい放電現象があるのみで、消えることはなかった。最後に、首輪をした黒猫で実験するも失敗……、いや、黒猫の後をつけると、別の場所に同じ首輪をはめた黒猫がおり、実験の回数分のシルクハットが転がっていた(タイトルバックのシーン)。実験は成功していた。「精密科学は常に精密ではない。予想と違う結果が出る」とテスラが言うように、違った効果を生み出す装置だったのだ。つまり、テスラの装置は離れた場所に物体を複製(コピー)するのだ。装置にシルクハットを置けば、シルクハットをコピーし、生きた黒猫もコピー、そしてアンジャーをもコピーする――。(原作とは装置の設定が違う。)マジックを題材にした単なるミステリー映画と思わせながら、SF映画にダイナミックにシフトチェンジするのが、本作の魅力の一つだ。

●テスラ装置による瞬間移動の謎
 テスラの装置により、ついに完成を見る【新・瞬間移動】。しかし、このマジックのためには、「手を汚す」必要があった。なぜなら、テラス装置のもとにオリジナルが残り、離れた場所にコピーが現れるので、瞬間移動として見せるためには、オリジナルが消えなくてはいけない。そこで、ステージのマジック用の穴からオリジナルを水槽に落とし、消したのだ。しかし、冷静に考えると、マジックのたびに、溺死させる必要などないようにも思える。が、替え玉のルートで、痛い思いをしたアンジャーは自分の分身の反逆を何より恐れたのではないだろうか? それにしても、ルートの時は舞台下に隠れ、テスラ装置の際は水槽でもがき苦しみ、直接、プレステージの喝采を浴びることが一度もなかったのは、何よりマジックを愛するアンジャーにとっては、最大の悲劇だ。

  ●100回限定の謎
 テスラ装置による【新・瞬間移動】の公演は100回限定と宣言されるが、本作ではその理由を具体的に示していない(もしかすると、カットシーンなのかも)。ボーデンの推理によると、宣伝のためであり、アンジャーが溺死用の水槽を100個しか用意できなかったためかも知れない。また、アンジャーは、消える方が自分なのか、現れる方が自分なのか、確信を持てず、舞台に上がるのが恐怖であったと言っており、その恐怖に耐えられるのが100回公演で限度だったのかも知れない。科学的にアプローチしてみると、たとえば書類をコピーする際、コピーした書類をさらにコピーすると、像がぼやけ画質が悪くなる。テスラ装置にも同じことが言え、人間コピーを繰り返すごとに像がぼやけ、コピーの限度が100回であり、そのことが装置の仕様書に書かれていたのかも知れない。

  ●アブラカタブラの謎
 ボーデンが処刑の前、言い残す言葉――「アブラカタブラ」。 マジシャンがよく使う、この「アブラカタブラ」は、古代ヘブライ人がおまじないの際、唱えていた言葉であるとも、アラム語の「私の言うとおりになる」、「この言葉のようにいなくなれ」を語源にするとか、諸説ある。

(文:脚本家・中村樹基/「世にも奇妙な物語」などを執筆)

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