ここから本文です。現在の位置は トップ > 地域ニュース > 島根 > 記事です。

島根

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

隠岐病院:離島の精神科医療に難題 医師確保できず、病棟一時休止の危機 /島根

 ◇患者・家族に広がる不安

 隠岐病院で7月以降の精神科常勤医師の確保のめどが立たず、精神科病棟(38床)が一時休止となる可能性が高まり、医師不足に悩む離島は、深刻な事態を迎えた。隠岐諸島で唯一の精神科も持つ同病院で常勤医が確保できなければ、離島の精神科医療に支障が出るのは必至だ。先行き不透明な状況に、患者や家族には不安も広がっている。【細川貴代】

 ◇「一番必要なのに…」

 病院を運営する隠岐広域連合は、常勤医が確保できない場合でも、7月以降の外来は非常勤医師体制などで維持する意向だ。だが、同病院の1日の精神科外来患者数は約35人(07年度)、島前・島後あわせた患者数は約400人。医師2人体制だった3月末までは島前地区での外来診療や施設訪問診療なども実施していたが、体制が崩れれば診療を制限せざるをえない。

 同病院では病棟休止を視野に19人の入院患者への対応や住民への周知、警察など関係機関との調整を始めた。武田博士院長は「隠岐には精神科医療は絶対に必要。だが現実的に今後は不透明で、病院として対応を検討中」と話す。4月末には病院の方針を明確化する予定だ。

 患者の家族でつくる「島後地区家族会」は7日、隠岐広域連合長の松田和久・隠岐の島町長を訪ね、常勤医確保と病棟存続の要望書を提出した。「一番必要な所が切り捨てられようとしている」。家族会関係者は語気を強めた。

 「病棟があるから地域でも安心して暮らせた」。島後地区家族の齋藤捷文会長(81)はこう話す。齋藤会長は躁鬱(そううつ)病の二女(60)と地域で暮らす。二女は3月には症状が悪化し、2週間ほど隠岐病院に入院した。

 年に1回は入院の必要があると医師に言われている。だが病棟休止となれば、本土まで行かなければならない。家族会の平均年齢は70歳を超える。入院の長期化、財政面の問題など高齢化する家族たちにとっても不安は計り知れない。齋藤さんは「病棟がなくなれば少々症状が悪化しても入院をがまんする患者も出てくる。そうなるとどうなるか……。精神科領域の疾患は日々症状も異なるし、本人も家族にとっても大変な問題です」と訴える。

 県の調査では、県内の病院勤務の精神科医は約79人。病院の要望89人に対し、10人不足している。精神疾患ほか高齢化での認知症への対応など年々必要性が高まる精神科領域への対応だが、病院勤務の激化などから近年では開業する精神科医が増加。離島や中山間地の病院にしわ寄せがきており、昨年には公立雲南総合病院(雲南市大東町)でも精神科病棟が休止となっている。

毎日新聞 2008年4月9日 地方版

島根 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報