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【よりよい医療のために】「事故調」を考える(中)真相究明願う遺族 (1/2ページ)
家族が医療事故で死亡したとき、遺族がまず願うのは「なぜ死亡したのか真相を明らかにしてほしい」ということだ。妻の悦子さんを亡くした永井裕之さん(67)もそうだった。
平成11年2月、東京都立広尾病院で左手中指の関節リウマチの手術を受けた悦子さんは、手術翌日に看護師が誤って消毒剤を点滴し、さらに当直医が誤った救急処置を行ったために命を奪われた。58歳だった。
事故直後、看護師は病院に対して点滴ミスの可能性を打ち明けていたにもかかわらず、事故当日、永井さんら家族には何が起きたのか全く知らされなかった。翌日の解剖後、死因は「点滴ミスの可能性が高まった」と説明されただけ。さらに、悦子さんが医療事故が原因で死亡した可能性があったにもかかわらず、病院は医師法21条の異常死の届け出を怠った。
病院の対応に不信感を募らせた永井さんは警察署に被害届を提出。看護師、主治医、院長らが起訴された刑事裁判と、その後に起こした民事裁判で、病院の事故隠しの実態が明らかになる。
裁判では、点滴ミスをした看護師2人に有罪判決が下されたほか、16年4月の最高裁判決で院長も医師法21条違反で有罪となった。この判決で、「医療ミスで業務上過失致死などの刑事責任を問われるおそれがある場合でも、届け出義務を課することは憲法に違反しない」との見解が初めて示された。