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2008年4月9日

 各地で起きる北京五輪聖火リレー騒動から見えてくるのは、抗議行動を引き起こす気高い人道主義だけではあるまい。表があれば裏もある

聖火が「消える」事態になったフランスは、国際オリンピック委員会(IOC)トップから「大きな商談をまとめたのに」と、非協力を批判されていた。商談とは、昨年、サルコジ大統領が大勢の財界人を連れて訪中した成果を指す

その恩義を忘れるな、というせりふは、五輪の政治化を嫌うはずのIOC委員長の極めて政治的な発言である。対するに、開会式欠席も辞さぬ大統領は、商売と外交戦略は別とばかりに国家の威信を掲げ、聖火リレーに水を差すように映る。こっちの方が役者が一枚上か

聖火は大勢の警備の列を従えている。その仰々しさは、歴史の授業で習った中国皇帝に対する貢ぎ物の行列のようにも映る。貢ぎ物は、やがて北京で元首に目通りする

露骨な政治ショーと化した聖火リレーに始まる五輪である。これ以上の粗相は避けたいだろう。元首と人民に恩義を売る好機だが、福田さんに、そこにつけ入る策はあるのだろうか。


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