福田内閣の支持率低下が止まらない。共同通信社がまとめた直近の緊急電話世論調査で支持率が初めて30%を割り込み、「危険水域」に突入した。福田康夫首相の求心力の低下は避けられず、政権運営の前途は極めて厳しいと言わざるを得まい。
緊急電話世論調査は四、五の両日に実施し、全国の有権者千三十二人から回答を得た。その結果、福田内閣の支持率は26・6%で、政権発足後最低だった三月の前回調査から6・8ポイント急落した。不支持は9・0ポイント上昇して59・6%に達した。不支持の理由で最も多かったのは「首相に指導力がない」で32・5%、「経済政策に期待が持てない」も24・0%を占めた。
国民の「福田離れ」が進んでいる背景には、日銀総裁人事や税制改正法案をめぐる首相の対応が「後手」を重ねてきたことへのいら立ちがある。混迷打開に向け、リーダーシップが発揮されない現状への不満が募っているとみるべきだろう。
参院で野党が過半数を占める「ねじれ国会」では、首相の打つ手が限られ、思い通りの政策が遂行できないのも確かだろう。しかし、直面するさまざまな課題に機敏に対応できずに立ち往生し、受け身のまま民主党に振り回される姿ばかりが目につく。多くの国民はそう見ているのではないか。
局面打開を狙った昨秋の大連立協議が幻に終わり、小沢一郎民主党代表とのパイプが途絶えた首相は、日銀総裁人事で民主党が忌避する財務、旧大蔵事務次官経験者を提示し、二度も否決される失態を演じた。世界経済が揺れる中、「総裁空席」の異常事態を生んだ不手際の責任の一端は首相にあろう。
税制改正法案でも、首相が道路特定財源の全額一般財源化を柱とする新提案を打ち出したのは三月末と遅かった。民主党を修正協議に引き込めないまま暫定税率期限切れに追い込まれ、混乱を招く結果となった。政治が機能しない状況は深刻だ。
約五千万件の「宙に浮いた」年金記録に関する政府の対応でも「公約違反」との声は63・9%に上った。全面解決のめどが立たないことへの国民の強い不信感の表れといえよう。
政局の主導権を握れないまま“低空飛行”を強いられている福田政権に、反転攻勢の糸口はなかなか見えてこない。福田首相は七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の成果をアピールすることで政権浮揚につなげたい意向のようだが、大胆な政治的指導力を発揮しない限り、支持率は高まるまい。
来月退任するプーチン・ロシア大統領と来年一月退任のブッシュ米大統領は、ロシア南部のソチで最後の首脳会談を行った。米国の東欧でのミサイル防衛(MD)施設建設計画で、両国がどこまで歩み寄るかが焦点だったが、プーチン大統領はあらためて計画反対の姿勢を表明し、問題は決着しなかった。
しかし、今後の両国の協力関係の指針となる「米ロ戦略枠組み宣言」の締結にはこぎ着け、冷却化していた両国の関係修復に一定の道筋をつけることができたことは評価できよう。
戦略枠組み宣言では、米のMD計画についてロシアが「反対を明確にした」と明記するとともに、ロシアによる施設監視などを行うとする米国の譲歩案を「重要で有益」とロシアが評価し、懸念解消のため対話を強化する方針で一致した。
二〇〇一年の米中枢同時テロ以降、対テロ戦争で親密さを示した両国関係は、旧ソ連圏での親欧米政権誕生などで冷却化する一途で、新冷戦を懸念する声も出ていたほどだ。
今回の会談はプーチン大統領の招待にブッシュ大統領が応じた。両大統領ともこのまま悪化した関係を放置して退任するわけにはいかなかったのであろう。戦略枠組み宣言は、両国の関係修復に向けた青写真であり、個々の問題は次期政権に解決を先送りしたとも言える。
プーチン大統領の後継となるメドベージェフ氏は、プーチン路線をそのまま踏襲することは間違いない。一方、米国がブッシュ大統領以後どんな路線を歩むかはまだ不透明だ。米次期大統領候補はそろってロシアに厳しい。民主党候補の二人は民主化後退を批判し、共和党候補は、さらに強硬だが、新冷戦を回避する対話重視の姿勢を貫いてもらいたい。
(2008年4月8日掲載)