最近は救急患者さんのたらい回しや医師不足などが問題となってきており、マスコミや新聞でも大きく取り上げられています。私たち医療従事者といたしましても耳の痛い問題です。
一体なぜこのような問題が起こるのでしょうか。よく言われていることですが、ひとつは「スーパーローテート」と呼ばれる研修制度の施行です。簡単に県外に研修にいけるので地方大学に研修医が残らず、医師の絶対数に地域格差が広がっていることも重要な要素です。そして取り残された病院の医師に負担がかかって、その医師も結局は現場から離れていってしまう。そして残った地域の病院の負担が増すといった、負の連鎖が続いていきます。
医師の場合、3交代制などまずありません。当直の日は当日日勤を行い、夕方から救急患者に対応し、ひどい場合はほとんど休眠することもなく翌日の日勤帯の仕事が始まります。36時間勤務は当たり前で、代わりの休日なども存在しないのが現状です。それでも医師が多少の愚痴は言いながらでも仕事をこなしているのは、代わりの人間がいないからです。誰かが残って患者さんを診なければ今の日本の医療が成り立たないのを実感しているからではないでしょうか。
そして最近思うのは翌日の診察でも十分な対応可能な軽症患者さんが、コンビニ感覚で救急外来を受診される機会が非常に多いという現状です。「1週間前から症状があるんですけど」と言われつつ夜中に来院されたり、また足がないのでタクシー代わりに救急車を使われる人が比較的多いように思います。街には24時間営業のコンビニやチェーン店が増え、診療に来られる人の意識もいつでも当たり前に診てもらえるようになっているように感じてしまいます。
実は救急車のたらい回しも同じ一直線上の話だと思います。軽症でも時間外にいく人が多ければその対応に追われてしまい、本物の重症患者さんに限られたマンパワーでは対応できなくなってしまいます。しかも限られた時間、限られた人材で、もし見逃しがあった場合、すぐに訴訟になりやすい傾向もでてきました。しかし、かといって一人一人完ぺきに検査診察すれば、膨大な時間と医療費がかかり、たらい回しは今以上に増えるでしょう。
難しい判断ではありますが、軽症な場合は診療時間内の受診をすることが医師不足や救急車のたらい回しなど対策の第一歩なのかもしれません。
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毎日新聞 2008年4月8日 地方版