法務省は、裁判員制度のスタートを来年5月21日とする政令案をまとめた。近く閣議決定される見通し。同日以降に起訴された殺人などの重大事件が対象となるが、初公判の約6週間前に裁判期日を知らせる「呼び出し状」を裁判員候補者に送付する必要があることなどから、裁判員が加わる裁判が実際に始まるのは来年7月下旬以降になるとみられる。
施行日を来年5月21日とした理由について、法務省は▽十分な周知を図り、国民が不安を感じずに参加できる体制整備にできる限り時間をかけたい▽5月21日は裁判員法が成立した日--などを挙げている。最高裁の今年1~2月の意識調査では60・3%が参加の意向を示しており、円滑で適正な実施ができると判断した。ただ、37・6%が「義務でも参加したくない」としており、今後も広報啓発が課題になりそうだ。
裁判員法は「公布から5年以内に施行する」と付則で定めており、来年5月27日が期限だった。付則は、裁判員裁判が円滑・適正に実施できる状況かどうか配慮して施行するよう求めている。
また、法務省は(1)捜査段階の容疑者に国費で弁護士を付ける制度の対象を重大事件から窃盗や詐欺などにも拡大する(2)検察審査会が2度「起訴相当」の議決をした場合、自動的に起訴される改正検察審査会法の施行--も来年5月21日とした。【坂本高志】
裁判員制度の実施に向けた手続きは今夏から本格化する。
7月以降、市町村ごとに裁判員候補者の数が割り当てられ、各地裁(支部を含む)は今秋、来年1年分の候補者名簿を作成。名簿に記載された人には今年末までに通知が届く。
来年5月21日以降は、この名簿から事件ごとに裁判員候補者が選ばれ、裁判所での選任手続きを経て6人の裁判員が決まる。
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■ことば
殺人や傷害致死、現住建造物等放火など重大事件の刑事裁判に、選挙人名簿から無作為に選ばれた20歳以上の国民が裁判員として参加する制度。原則として裁判員6人と裁判官3人で、有罪、無罪の判断や量刑を決める。70歳以上や学生、重い病気や親族の介護・養育のほか、政令で定めた「やむを得ない事由」があれば辞退できる。
毎日新聞 2008年4月8日 東京夕刊