政府が7日に提示する日銀の次期総裁人事案は、政府・与党が交渉窓口を自民党の伊吹文明、民主党の鳩山由紀夫両幹事長のラインに絞って環境整備を進めた。ただ、民主党内からは、渡辺博史前財務官を副総裁とする案について異論が出ており、火種も残っている。
「伊吹幹事長から1、2度連絡をいただいている。人事が承認されるようにしたいという意向が伝えられている」。鳩山氏は4日の会見でこう述べ、次期総裁人事の提示に備え伊吹氏と連携してきたことを明らかにした。
政府は、福田康夫首相自らが民主党内の感触を探りながら、副総裁だった武藤敏郎氏の昇格案、元大蔵事務次官の田波耕治氏の就任案を相次ぎ国会に提示したが、共に参院で不同意になった。
その後、与党は新たな交渉窓口を求め、先月28日、伊吹、鳩山両氏が会談したのを糸口に、鳩山氏にパイプを一本化。鳩山氏は、早期決着を望む機運が党内で高まっていることを伝え、「財務省出身者は総裁候補としては受け入れられないが、副総裁についてはこだわらない」との線引きも示したという。
このため政府は、一時検討した渡辺氏の総裁就任案は受け入れられないと判断し、白川方明副総裁の総裁昇格案へ戦術を転換。伊吹氏は4日、鳩山氏に白川副総裁の昇格案を電話で打診し、7日国会提示の環境を整えた。
ところが、民主党の幹部会では、渡辺氏を副総裁とする案に対して「早期に決着すべきだ。人物本位で選ぶべきだ」「財務省出身はやはりダメだ」と意見が分かれ、結論を7日まで持ち越した。
民主党幹部の一部に、交渉ルートが伊吹、鳩山両党幹事長ルートに絞られたことへの反発がある。党幹部は「党内も硬くなる。渡辺氏については、これで厳しくなった」と指摘した。【上野央絵、堀井恵里子】
毎日新聞 2008年4月5日 東京朝刊