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現在位置:asahi.com>社説 社説2008年04月08日(火曜日)付 クラスター爆弾―日本も廃絶の決断を激突ばかりが際立つ国会だが、与野党の議員が超党派で勉強会を開き、関心を寄せている国際問題がある。 ひとつの爆弾から最大600個の子爆弾をばらまき、地上の戦車部隊などを一網打尽にする。そんなクラスター(集束)爆弾を禁止するための条約づくりである。 この爆弾が非人道兵器として強く批判されるのは、爆発しそこなった子爆弾が数多く残り、戦闘が終わったあとも住民に悲惨な被害をもたらすからだ。「第2の地雷」とも言われる。 昨年2月から始まった条約づくりは「オスロ・プロセス」と呼ばれる。既存の通常兵器禁止交渉の中では進展しないため、ノルウェーのオスロに有志の国々が集まり、条約づくりを急ごうと動きだした。 この2月、禁止条約の土台となる宣言が採択され、日本を含む82カ国が署名した。年内に条約の調印にこぎつけることを目標に、来月、アイルランドで開かれる交渉で条約文を詰める予定だ。最大のやま場である。 被害を受ける途上国や、軍縮に熱心な欧州の国々を中心に、多数の国々は全面禁止による「廃絶」を主張している。赤十字国際委員会や人道NGOもこれを後押ししている。 これに対し日本政府は、禁止対象に例外を設けたり、条件をつけたりしている。英独仏も同様だ。米国や中国、ロシアはそもそも参加していない。 日本政府の言い分はこうだ。 不発弾率が1%以下といった改良型ならば住民被害も少ないので、禁止までするのは行きすぎだ。さらに、条約に入らない同盟国との共同作戦を妨げるものであってはならない――。 軍事的な有用性からこの爆弾を手放そうとしない米国への配慮は明白だ。北大西洋条約機構で米国と同盟を組む英独仏も同じ事情がある。 日本政府が、部分的とはいえ禁止に踏み出したのは前進だが、これではまったく不十分だ。 いくら不発弾率が小さいといっても、検証のしようがない。旧ユーゴやアフガン、イラク空爆ではそれぞれ20万〜30万個近くの子爆弾が放たれたといわれる。数多くの住民被害を生む非人道性に変わりはないのだ。 米国との同盟に配慮すべきことは分かるが、非人道兵器を廃絶するという大義を譲ってはなるまい。米国にも交渉への参加を促すのが筋だろう。 超党派の議員たちは、全面禁止を決断するよう政府を突き上げてもらいたい。日本が保有するクラスター爆弾を率先して廃棄させることも重要だ。 97年末の対人地雷全面禁止条約をめぐって、当時の小渕外相は政府内の慎重論を抑え、土壇場で賛成に回った。福田首相もアイルランドでの最終交渉までに決断すべきである。 バスケ協会―子どもの夢を壊すなここまでこじれれば、組織を運営する能力も資格もまったくないといわざるをえない。 日本バスケットボール協会が、新しい役員や予算を決められないまま新年度を迎えた。一昨年日本で開いた世界選手権大会が失敗し、その責任をめぐる内紛から、1年余りまともな運営ができないという異常な事態である。 バスケット協会には全国で小中学生を含めて60万人の会員がいる。90年代にはやった漫画「スラムダンク」にあこがれて、バスケットを始めた子どもたちも多い。協会の混乱はかれらの夢を壊す。 内紛の直接の原因となった男子世界選手権大会は、テレビ放映権料やスポンサーが十分に集まらず、約13億円の赤字が出た。 その責任を追及して人事の刷新を求める反執行部派と、執行部派が対立した。組織の最終決定機関である評議員会が反執行部派のボイコットによって3分の2の定足数を満たさず、昨年度だけで8回も流会した。もはや組織の体をなしていない。 こうした事態を受けて、日本オリンピック委員会(JOC)は先月中旬、バスケット協会に対し、会議に参加させないなどの無期限の資格停止処分を科した。JOCは五輪への選手派遣拒否や、国庫からの補助金の分配停止もちらつかせた。 実は、バスケット界の混乱は10年余り続いてきた。プロ化をめぐっては男子リーグの分裂まで起きた。 問題の原因をたどれば、数人の役員による対立にたどりつく。その多くは学校や社会人チームの指導者出身である。役員が狭い世界からしか出てこないので、いったん役職に就くと、いつまでも居座る。その結果、スポーツ団体というのに、役員には高齢者ばかりが目立つことになる。 そうした役員らが名誉欲に走ったり、利権をめぐって争いを続けたりするのだから、見苦しい。 ここは執行部派、反執行部派の双方がそろって退き、できるだけ早くメンバーを一新した体制で出直すしかないだろう。 問題を抱えるスポーツ団体はバスケットに限らない。このところフィギュアスケートやクレー射撃、テコンドーなどでも不祥事や運営の混乱が相次いでいる。 こうしたスポーツ団体を健全な組織に変えるためには、まずは役員の定年制導入や多選禁止が必要だろう。外部から運営の専門家などの人材を招くことも考えた方がいい。将来幹部になれそうな人を選び、海外や企業で運営の経験を積ませることも大事だ。 バスケットボール協会の長年にわたる泥仕合からくみ取るべき教訓は少なくない。 PR情報 |
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