第24回
フランス料理
シェ・イノ
(京橋)
コースでも一皿のポーションは
アラカルト並。値段も良心的な
コース主体の古典的フレンチ。
初訪問は、井上旭シェフが独立して数年後の80年代半ばでした。「ソースのイノ」とか言われていたはずですが、ソースだけではなく、当時はかなり満足して帰宅したと記憶しております。
その後も時々訪問していたのですが、21世紀に入ってからはご無沙汰。今回が移転後、初の訪問であります。
「カンテサンス」はじめ、訳のわからない3つ星、2つ星フレンチの後塵(こうじん)を拝したことにかなり不満を抱いていると漏れ聞く井上シェフ。イタリアンと見間違える「焼き物主体」のフレンチがもて囃(はや)される中、時代のニーズに迎合せず手間のかかるソース主体のクラシック料理が果たして生き残れるのだろうか。久々の訪問で友里の感想を最初に書かせていただくと、「やっぱり古典は美味しいぜ」。
移転後の店はかなりゴージャスで大箱になっておりました。レセプションに、使用されているとは思えないウェイティングバーまであります。客入りは半分くらいでしたが、常連、そして年配層が目立ちました。
アラカルトは豊富で、しかも価格もそんなに高くありません。前菜は12種もあり4000~5000円。魚料理が5000円前後、肉料理は子羊、牛、蝦夷鹿、鳩、山鶉(やまうずら)、真鴨など食材も豊富で9種ほど、価格も5500円から1万円ほどの範囲でありました。価格が昔とそれほど変わっていないことに驚きました。
コースは1万3650円、1万5750円、そしてスペシャリテの寄せ集めの2万1000円の3種。今回はミシュランの紹介文にあるスペシャリテを多く試してみたかったので、「コースではなくアラカルトを頼むべし」という普段の主張を取り下げて2万1000円のコースを選定しました。
温度玉子とトリュフのピュレは良い意味での濃厚な味で○。オマールとインゲン(トリュフ&マッシュルームのソース)は、香りの割にやや緩めの味ながらまずまず。ムツゴロウ氏が世界一と言っている、この店の「フォアグラのテリーヌ」は、まったり濃厚でやはり悪くはありませんでした。
そしてスペシャリテの「舌平目 アルベール風」。魚と肉をベースにバターをたっぷり加えたソースも濃厚で美味しい。
そして十数年ぶりかの「仔羊のパイ包み マリアカラス」は、アラカルトとそれほど変わらないポーションで、これまた満足の一品でありました。
イタリアンと区別のつかないフレンチに慣れきっている方には胃の負担が気になるかもしれません。しかしフレンチは肉の炭火焼きやローストだけではないのです。久々に本当の意味でのフレンチを食べたと満足した夜でありました。
コースの料理は通常、量が少ないため火入れで失敗している店も多いのですが、さすが『シェ・イノ』は火入れの問題があるのでコースでもそれほどポーションを落としていないと言っております。
コースのメインに値する舌平目、仔羊はヘタな店の単品よりも量があり、内容もアラカルトと同じものなので、胃袋に自信のある方はこの店ではぜひ、コース(特にスペシャリテ寄せ集め)がおススメです。
ただしワインがちょっと高い。というかグラスシャンパンが高すぎです。「本日のグラスシャンパンです」と注がれたそのものは明細で3360円となっておりました。2000円以下のシャンパンも用意すべきと考えます。
スティルワインも安くはありません。小売りの倍以上の値付けのようですが、ブルゴーニュの村名で1万円以下が1種、マディラン(フランス南西地方のワイン産地)のも7350円で用意されていたので、自腹族はそれらに逃げるしかないでしょう。
白のカリスマ造り手、ラフォンの’02ムルソーが2万7300円、’04ロマネ コンティ(こんなワイン頼めるはずないですけど)が94万円ほどと、値付け的には高く思えないワインもいくつかありました。
ホールスタッフの料理説明もしっかりしており、この店が『シェ松尾』と同じ1つ星とは悪い冗談としか思えません。
季節感に溢れる料理だとは思えませんが、料理に傑出したものがありますので☆2つとさせていただきました。
友里の個別評価
味 | |
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サービス | |
内装・居心地 | |
CP(コストパフォーマンス) |
DATA
【店名】 | シェ・イノ |
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【住所】 | 中央区京橋2-4-16 |
【予算】 | 夜コース 1万3600円~ |
次回の更新は4月10日(木)です