医師不足の解消につなげようと、県は本年度から、医師を県職員として採用し、各地の医療機関に配属する「ドクターバンク」事業を始める。勤務医の少ない地域の中核病院へ派遣することで、救急医療体制を維持する狙いもある。 (生島章弘)
県内の医師数(二〇〇六年十二月末現在)は人口十万人あたり一五五・一人で、全国で埼玉県に次いで少ない。特に県北や県西、鹿行地域では同百人を下回り、深刻な状況になっている。
このため、県は年度内に医師を五人ほど採用し、ドクターバンクに登録。主に救急医療を担う病院などに派遣する考え。契約は二年ごとの更新制で、原則として最長四年まで。給与は配属先の医療機関が支払う。同様の事業は、十七道県で実施されているという。
従来、医療機関は関係の深い大学医局を通じて勤務医を確保していたが、臨床研修必修化の影響などで、新卒の医学部生の医局離れが加速。大学も、病院に派遣していた医師を引き揚げ始めた。
病院側は新たなルートで医師を探す必要に迫られたが、独自に募集するには手間がかかる上、治療方針の違いなどでトラブルが発生する懸念もあった。ドクターバンクは、県が窓口になることで採用業務の効率化を図り、配属先も柔軟に変更できる利点があるという。
また、県は〇九年度から筑波大医学群医学類に、推薦入学の「地域枠」(定員五人)を設けることで同大と合意。入学者に学費などに相当する奨励金を県が支給し、卒業後に九年以上、県内で働いた場合、返済を免除する。
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