◎五箇山音楽祭 石川との縁を深める場に
東海北陸自動車道の全線開通を契機に、世界文化遺産の合掌造り集落のある南砺市五箇
山を発信しようと、地元NPOが発案した「五箇山音楽祭」が開かれる。出演者が、石川と富山の吹奏楽部員を指導する企画も組み込まれており、塩硝の道などを通して藩政期から続く五箇山と金沢市との縁を確かめ合う場にもなるだろう。全線開通を節目にして、さらに両地域のつながりを深めるために、行政もさらに連携し、音楽祭を五箇山の代表的イベントとして今後も定着させたい。
東海北陸自動車道は、小矢部砺波ジャンクションで北陸自動車道につながるが、そこか
ら金沢東インターまでが二十三・一キロ、富山西インターまでが二十三・四キロと、ほぼ同じ距離である。東海北陸自動車道全線開通は、何も富山だけの話ではない。北陸に人やモノをもたらす基幹道路として石川側も大いに活用し、北陸新幹線金沢開業の前段で、大いに地域力を高める動脈にしたい。
その意味で、東海北陸自動車道における北陸の「玄関口」に位置する五箇山は、富山県
にとってだけでなく、石川県、とりわけ歴史的に縁のある金沢にとって重要なポイントである。世界遺産のインパクトを生かしながら、金沢と一体感をもった地域戦略があっていいだろう。
南砺市では昨年秋に、火薬の原料となる塩硝の生産地であった五箇山をたどるツアーが
開かれ、定員を超す金沢市民が参加した。今年に入って五箇山では地域再生ビジョンが策定され、金沢百万石まつりや、こきりこ、麦屋まつりの会場で伝統民謡を披露し合う提案などが盛り込まれた。
こうした加賀藩を切り口にした各種プランが浮上する中で、初開催される五箇山音楽祭
は、七月末、五箇山インターに近い南砺市菅沼の交流施設「合掌の里」が会場となり、母親が石川県の旧鳥屋町出身の歌手一青窈(ひととよう)さんを招くことにも縁を感じる。
医療も含め多様な分野で地域連携する金沢市と南砺市も、地元有志らの熱意をくんで音
楽祭を広く周知し、五箇山と金沢の縁をさらに深める後押しをしてほしい。
◎北京五輪開会式 皇族の出席は難しかろう
北京五輪開会式への天皇、皇后両陛下をはじめとする皇族方の出席要請について、正式
に見送りを決める時期ではないか。町村信孝官房長官は会見で「何一つ決まっていない」と述べたが、既に英国のチャールズ皇太子やドイツ、ポーランド、チェコなどの首脳が開会式の不参加を決めている。
チベット暴動で、中国政府の弾圧に国際的な批判が高まり、聖火リレーを妨害する動き
も活発化した。日中間には中国製ギョーザ中毒事件や東シナ海のガス田開発など解決のメドが立っていない問題もあり、北京五輪をお祭りムード一色にさせず、抑制気味にしておくことも必要だ。開会式には、政府首脳の出席を検討するだけで十分ではないか。
ロンドンで行われた北京五輪聖火リレーでは、抗議デモ参加者による妨害行為が続出し
た。聖火の採火式があったギリシャでは「国境なき記者団」の一員が乱入し、取り押さえられる前代未聞の騒動があった。いずれも中国チベット自治区のラサで起きた大規模な暴動を武力鎮圧し、海外メディアを排除して報道管制を強いていることなどへの抗議である。
中国の「暴挙」はそれだけではない。スーダンに武器を輸出し、ダルフール紛争を泥沼
化させたとして、国際社会の批判を浴びてきた。映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏がダルフール政策に抗議して開会式の芸術顧問を辞退したように、欧米では以前から北京五輪のボイコットを求める声がくすぶっていた。
中国が、オリンピックを国威発揚の舞台にしたいと願う気持ちは理解できる。だが、国
際社会の懸念や忠告に耳を貸そうともせず、自国への批判には罵声(ばせい)を返すだけ、という態度にはうんざりさせられる。人権や言論の自由を踏みにじっても、それがどうしたと言わんばかりである。
中国が批判を無視して五輪を開催するなら、開会式へのボイコットがさらに増えるのを
覚悟しなければならないだろう。皇族方の不参加は胡錦濤国家主席の来日前に、表明しておくことが好ましい。