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日銀には、かつて法王と呼ばれた実力者、一万田尚登(いちまんだひさと)・第18代総裁を生んだ歴史がある。終戦直後のことで、総裁や幹部らが公職追放で次々と消えた結果、総裁に上りつめたといわれる 民主党の同意方向で白川副総裁が昇格して第30代総裁につくことが確実になった。連想ゲームではないが、平安末期の「白河(しらかわ)法皇」の名が浮かぶ。天皇退位後も実権を持つ「院政」を開始した人である 時の権力が思い通りにならぬものとして「サイコロの目、鴨川の水、僧兵」の三つをあげたことで知られる。巨大寺院が僧兵を使って勢力拡大と権力争いに明け暮れた混乱と、日本特有の二極政治の始まりを背景にした言葉である 平成の日本。衆院と参院に二つの権力が存在する「二院制」の世である。最高権力者であるはずの福田首相は意のままにならぬことだらけで、相手は僧兵どころではない。天皇と法皇の二つの権力が併存した昔のようにねじれ、その行方さえ分からぬ 日銀人事は終戦直後の混迷を思わせ、二極政治の混沌(こんとん)は九百年前から進歩なしと言えば言葉が過ぎるか。歴史が繰り返されないことを祈る。
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