公園の木の育ち方は、県で管理するのと、国が管理するのとで違いが出るのか。こんな問いかけに、国土交通省の幹部は「管理により全然違う」と、国が行えば立派な木に育つと言わんばかりに答えた。
これには質問した側の有識者もあきれて「そんなことはないですね」とすぐに打ち消した。国の出先機関の業務を地方に移す協議をしている政府の地方分権改革推進委員会でのやりとりだ。
委員会は中央省庁への聞き取り調査を一月から行ってきた。だが各省庁は、地方へは仕事を移せないとしてゼロ回答ばかり。権限を手放したくない本音が浮かぶ。木の育ち方のやりとりは、その象徴だ。
省庁側は「全国一律の対応が必要」「高度な専門性が求められる」などと国がやるべきとの理由を並べる。委員側は「理由になっていない」「論拠が乏しい」と引き下がらない。
委員会は、官庁街の東京・霞が関にほど近いビルの一室で開かれている。国や地方に重要な協議にしては目立たぬ場所での開催だが、繰り広げられる攻防は熱く、かたずをのむ思いがする。
委員会は八日で省庁からの意見聴取を終え、今夏をめどに出先機関の見直し案をまとめる予定だ。省庁側の主張は説得力に乏しいと言わざるを得ない。地方への大胆な権限移譲が打ち出されて当然だろう。