「あんまり待たすんじゃねえ」とは、私ではなく、縦の台詞だ。
こぢんまりとした台湾料理屋に、懐かしい顔どもがあった。
不義理な私なので、ほんとうに久しぶりだが、連中ときたら、いつも会っているらしい。
株屋の貝塚がしきりに車に乗ろうと言う。
このタクシー好きの私でさえ、絶対歩く距離だというのに。
「株屋は歩かない。電車には乗らない」が鉄則らしい。
「だったら、君だけ乗れよ」と言うと、笑っていた。
あれはどこをどう通ったものか、ずいぶん静かだった。
馴染みのバーは、うまいこと空いていて、みんなゆったりと席についた。
身の回りを改めるが、失ったものは何もないようだ。
大きなほうの財布に、札が残っているので、まさか誰かに迷惑をかけたかと思ったが、5枚残っている一万札と見えた紙幣は、改めるとすべて千円札だった。
がっかりするような、ほっとするような。
山崎から、優しいメールが来た。
あんなに大酒を飲んだのは久しぶりだったとのこと。
聞けば、ゴールデン街の後、朝の光で明るい新宿で、ホルモン屋に入り、私は焼肉奉行をしていたらしい。
タイムカード組は、涙目で帰って行き、最後は山崎と私が二人、これまた別の店で、ギョウザとウーロンハイで〆たそうだ。
が、彼女の記憶も、途中がごっそり抜けているとのことである。