名乗りながら近づいていくと、すぐに誰かは判ってくれた様子で、
「どうしたの」と。
著作をお渡しした。
その後、顔の広い岩田嬢のことだから、いろんな編集者にお目に掛かった。
有名出版社の編集者は、ガチガチに律儀な人か奇人、そのどっちかであると思った。
小学館の雑誌編集部を訪れ、担当編集者とお会いする。
集英社にせよ小学館にせよ、みんなスマートなエリートである。
私らのように、地べたを這いずっている感がなく、みな、かっこいい。
書泉グランデ、三省堂、書泉ブックマートで、それぞれ、自分の著作が並んでいるのを初めて見た。
厳密に言えば「ディレクター読本」や「高木工務店」以来のことだ。
が、新刊の文芸書はやはり店先にあるし、東野先生や馳先生の隣に自分の本が並んでいるのは感慨深い。
「お茶でも飲みましょうか。それとも、この時間ならビールね」と岩田嬢が言う。「一度会社に電話させて」
神保町のビールに関しては、いい思い出がある。
ヨーロッパビールの専門店に、かつて蛸山に案内してもらったことがある。
今は、某出版社の営業部長兼取締役なのだが、今回の私の出版が何かシャクに触ったらしく、なんだか難しいメールを寄こしてそれっきりだ。
そのビールハウスに行きたいのだが……。
聞けば岩田嬢も、神保町には心当たりのビールハウスがあるらしい。
細かい食い違いを排除すれば、同じ店のことを言っているのが判った。
岩田嬢の土地勘のおかげでその店にたどり着くことができた。
白濁した金色の、フルーティーな生ビールを飲む。
レバーペーストもピクルスも、鶏のモモ焼きもスパゲッティも美味しい。
電話が鳴った。
メールの着信だ。
見ると、ポン友の長島縦である。
「枳(からたち)が上京することになり、高校時代の仲間が新宿に集まることになった。メンバーは男──俺(長島)、枳(家族旅行)、釜屋(最高裁判事)、貝塚(株屋)、女──山崎薫(売れっ子ライター)、三瓶(わからん)、山の上(絵本作家)だ。お前が来れば7人になる。だから、来いや」
岩田嬢にわけを話し、神保町を出る。
新宿までは、すぐだった。
「どうしたの」と。
著作をお渡しした。
有名出版社の編集者は、ガチガチに律儀な人か奇人、そのどっちかであると思った。
集英社にせよ小学館にせよ、みんなスマートなエリートである。
私らのように、地べたを這いずっている感がなく、みな、かっこいい。
厳密に言えば「ディレクター読本」や「高木工務店」以来のことだ。
が、新刊の文芸書はやはり店先にあるし、東野先生や馳先生の隣に自分の本が並んでいるのは感慨深い。
ヨーロッパビールの専門店に、かつて蛸山に案内してもらったことがある。
今は、某出版社の営業部長兼取締役なのだが、今回の私の出版が何かシャクに触ったらしく、なんだか難しいメールを寄こしてそれっきりだ。
そのビールハウスに行きたいのだが……。
聞けば岩田嬢も、神保町には心当たりのビールハウスがあるらしい。
細かい食い違いを排除すれば、同じ店のことを言っているのが判った。
岩田嬢の土地勘のおかげでその店にたどり着くことができた。
白濁した金色の、フルーティーな生ビールを飲む。
レバーペーストもピクルスも、鶏のモモ焼きもスパゲッティも美味しい。
メールの着信だ。
見ると、ポン友の長島縦である。
「枳(からたち)が上京することになり、高校時代の仲間が新宿に集まることになった。メンバーは男──俺(長島)、枳(家族旅行)、釜屋(最高裁判事)、貝塚(株屋)、女──山崎薫(売れっ子ライター)、三瓶(わからん)、山の上(絵本作家)だ。お前が来れば7人になる。だから、来いや」
新宿までは、すぐだった。