姉は住民票に記載されているのに、妹は記載されない。そんな2歳違いの無戸籍の姉妹が仙台市にいる。無戸籍児を住民票に載せる自治体は一部で、当事者から「住む場所で対応が異なるのは不公平」との声もある。このケースは、同じ自治体で対応が分かれ、記載が担当者の判断に委ねられている実態を示している。
姉妹は、仙台市青葉区に住む公務員の女性(39)の長女(11)=小学6年=と次女(9)=同4年。女性は95年5月に婚姻届を出さない「事実婚」をし、2人を産んだ。事実婚なので、女性は、出生届に「嫡出でない子」とチェックしなければならないが、「差別的扱いだ」と拒否したため、届けは受理されず、2人は無戸籍のままだ。
住民基本台帳法施行令は「届け出がないと知った時は、事実を確認して職権(自治体の権限)で住民票の記載をしなければならない」と定めている。東京都北区や足立区などでは、無戸籍でも住民票の記載をしている。
長女について、女性は当時住んでいた宮城野区役所で、住民票に記載するよう要望。市民課は、住民票の世帯主を女性、本籍と戸籍筆頭者は「不詳」として、記載した。次女についても同様に宮城野区に相談したが、住民票に記載されず、転居した青葉区でも対応は変わらなかった。
女性は「住民票のある長女は、乳幼児の行政サービスなどを普通に受けられたが、記載のない次女は乳幼児健診や就学時健診の案内も届かなかった。なぜ対応が異なるのか」と批判している。
長女の住民票記載時の宮城野区の市民課長(68)は「子供に罪はないと考え、記載を決めた」と話す。一方、次女の記載を拒否している青葉区は「住民票は戸籍と連動するもので、戸籍がないから記載できない」としている。対応が変わった理由について、仙台市区政課は「個人にかかわる問題なのでコメントできない」と話している。【工藤哲】
▽戸籍や住民票に詳しい二宮周平・立命館大教授(家族法)の話 住民票は、自治体の住民サービスを円滑にするためのもので、家族関係を証明するための戸籍とは性格が異なる。無戸籍となる理由はさまざまだが、子供の人権を守るために住民票には記載すべきだ。総務省は、住民と確認できたら記載するとの通達を出すなど、住民が不公平感を持たないよう自治体を指導すべきだ。
毎日新聞 2008年4月7日 15時00分(最終更新 4月7日 15時00分)