福田内閣は「危険水域」に入りつつあるのではないか。毎日新聞が5、6日に行った世論調査によると、内閣支持率は24%と初めて2割台に落ち込み、過去最低を更新した。一方で、不支持は57%と6割近くに達した。この支持率は安倍前内閣が昨夏の参院選惨敗直後に記録した22%に近い水準だ。民意の離反を福田康夫首相は重く受け止めるべきである。
昨年9月の政権誕生時、福田内閣は支持57%、不支持25%だった。それが約3カ月で不支持が上回り、半年で両者の数値は逆転した。先月の調査以降、日銀総裁人事で空席を招き、「道路国会」は揮発油(ガソリン)税の暫定税率の期限切れに波及した。物事が決まらない政治に世論がいらだち、首相の政権運営能力に厳しい視線を向けている表れだろう。
さらに今回、注目されるのは、暫定税率維持や、道路特定財源見直しをめぐる回答だ。首相は先月、道路財源を09年度から一般財源化すると同時に、暫定税率は維持する提案を発表した。緊急記者会見を開き国民に直接訴えたのは、世論を意識してのことだ。
しかし、十分な理解を得るには至っていないようだ。一般財源化について5割近くは今年度からの実施を求め、道路整備中期計画の見直しも7割が「不十分」と評価した。期限切れした暫定税率を復元するため必要な衆院での再可決についても6割以上が反対だ。政府・与党は月末にも再可決の判断を迫られるが、世論のハードルは高い。
この状況をどう打開するか。やはり、地道に国民の信頼を取り戻すしか道はあるまい。内閣不支持の理由で最も多いのは首相の指導力不足で、45%に達した。だからこそ、道路財源については、09年度からの一般財源化が口約束でない証しとして、閣議決定などの手続きを速やかに進めることが必要だ。そうしないと、国民は首相の本気を感じ取れない。
同時に、福田内閣ならではの政策目標を明確にする必要がある。「ねじれ国会」の宿命とはいえ、新テロ対策特措法、暫定税率延長など「期限切れ問題」の処理に追われている感がある。宙に浮いた年金記録、道路財源の無駄遣いなどへの対応も国民の失望を招いている。官僚との融和ばかりが目立ち、首相の顔が見えないままでは、国民の共感は得られまい。
民主党も、世論の冷ややかな評価から目を背けてはならない。政党支持率は自民党の方が高く、暫定税率の期限切れをめぐる対応を評価する声は3割にも満たない。民主党に日銀総裁空席の責任があるとの回答も4割を超した。いたずらに政治を混乱させているのではないか、との国民の疑念の反映だろう。壊すだけでは民意はついてこないことを、民主党は肝に銘じるべきだ。
毎日新聞 2008年4月7日 0時20分