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地域経済、雇用に悪影響

公明新聞:2008年4月6日

暫定税率失効
36道府県が道路事業など凍結
ガソリンスタンドは赤字覚悟で値下げ

暫定税率失効で「開かずの踏切」対策など自治体の道路整備事業への支障が懸念される(写真は東京・京急蒲田駅付近の連続立体交差事業)

 道路特定財源の暫定税率が4月1日で期限切れとなりました。全国のガソリンスタンドからは、赤字覚悟の「値下げ競争」に悲鳴が上がり、収入減に直面している地方自治体の財政にも深刻な影響が出始めています。

 レギュラーガソリン1リットル=115円――。栃木県宇都宮市内ではレギュラーガソリンを1リットル当たり26円値下げし、販売する店が現れた。揮発油(ガソリン)税は製油所からの出荷時にかかる「蔵出し税」。ガソリンスタンド(GS)が3月末までに仕入れた在庫は1リットル当たり25・1円の暫定税率が上乗せされています。利用客から「なぜ値下げしないんだ」と言われれば、高い税率の在庫を、赤字覚悟で値下げせざるを得ないのが実情です。

 公明党の太田昭宏代表は1日、全国石油商業組合連合会(全石連)の森洋副会長らとともに、甘利明経済産業相に対し、同日からの揮発油税暫定税率失効に伴う、石油販売業界に対する支援策を申し入れました。

 石油情報センターが2日発表した緊急価格調査によると、1日現在のレギュラーガソリン1リットル当たりの店頭価格(全国平均)は、142・2円。失効直前の3月31日と比べると10・7円の下落で、軽油も10・5円安の121・8円。価格競争も一因となり、ガソリン、軽油ともさらに下落することも予想されています。

 こうしたGSの経営に及ぼす影響に加えて、暫定税率の期限切れを受け、47都道府県のうち、36道府県が道路事業などの一部予算の執行を凍結。うち4県が道路事業を含む公共事業の執行を見合わせ、7府県が福祉・教育を含めた経常経費の実施を凍結しています(1日現在、総務省まとめ)。

 道路事業凍結が長引けば長引くほど、建設業などを中心に地域経済、雇用にも深刻な影響を与えることは必至です。このため全国知事会は暫定税率失効に反発を強めています。

 公明党は国民生活、地方経済の混乱回避に向け、全力で必要な措置に取り組んでいきます。

地方から一斉に“反発”の声

「誠に遺憾」 全国知事会緊急声明
「(民主党の)政局のために戦っているような状態は責任政党の在り方ではない」 麻生全国知事会長・福岡県知事
「医療・福祉・教育等、住民サービスに確実に支障を来すことになる」 東国原・宮崎県知事
「暫定税率の一日も早い復活を強く望む」 神田・愛知県知事


一方、全国知事会(麻生渡会長=福岡県知事)など地方6団体は3月31日、暫定税率の失効について「誠に遺憾だ」とし、「国民生活への影響を最小限にとどめるために、与野党は福田総理大臣の新たな提案を踏まえて真摯に協議し、責任ある結論を得るよう全力を尽くすべきである」とする緊急声明を発表しました。

 「必ずわれわれ(地方)にしわ寄せがくる。暫定税率の回復を求めていかなければならない」

 同知事会の麻生会長は記者会見でこう語り、参院が税制改正法案を議決しない場合は月末にも衆院で再可決すべきだとの考えを改めて示した上で、「政局のために戦っているような状態は責任政党の在り方ではない」と参院審議に応じなかった民主党を批判しました。また、暫定税率失効を受け、道路整備事業の一部凍結や入札決定保留などの措置を取る自治体が相次いでおり、知事からは一様に不満の声が上がっています。

 宮城県の村井嘉浩知事は「まさか3月末までに与野党が話し合いできないとは想定していなかった」とコメント。宮崎県の東国原英夫知事は「地方自治体の財政がこれ以上逼迫したら、ガソリン値下げどころの話ではなくなる。医療・福祉・教育等、住民サービスに確実に支障を来すことになる」とブログで発言しています。

 さらに、熊本県の潮谷義子知事も「期限切れが長引けば長引くほど道路事業への影響が深刻になる」と懸念を表明。愛知県の神田真秋知事は「(暫定税率の)一日も早い復活を強く望む」として、税制改正法案の再可決を求めています。


北側一雄幹事長に聞く

国民生活、地方経済 混乱回避に全力
法案1カ月たなざらし 民主の対応は責任放棄

暫定税率の失効が国民生活などに与える影響や、今後の対応などについて、公明党の北側一雄幹事長に聞きました。

【経緯】

 一、4月1日から道路特定財源の暫定税率が期限切れとなり、ガソリンスタンド(GS)をはじめ国民生活に混乱を来し、地方財政にも大きな影響を与えています。こうした事態を招いたことは、与党としても政治の責任を痛感しています。

 一、揮発油(ガソリン)税の暫定税率維持を含む歳入法案(税制改正法案)は2月29日に衆院で可決され、参院に送付されましたが、参院で第1党の民主党は、衆参両院議長のあっせんで、予算案と歳入法案ともに「年度内に一定の結論を得る」と合意しているにもかかわらず、丸1カ月間、法案を審議入りさせませんでした。これは前代未聞の、異常な参院の運営であり、国民に対する責任放棄です。

 民主党は暫定税率を期限切れにさせて、国民生活や地方財政の混乱を犠牲にしても福田内閣を追い込んで政局に持ち込むことが狙いだったと言わざるを得ません。

【国民生活、地方財政への影響】

 一、特に全国4万7000店舗のGSには大変な迷惑を掛け、消費者にも混乱を与えています。消費者からすれば、ガソリンの値段が下がることは歓迎すべきことかもしれませんが、大きな影響を受けるのは地方財政です。

 地方自治体の2008年度予算は暫定税率が維持されることを前提にしており、暫定税率が失効することによる収入減は、国と地方を合わせて年間2兆6000億円。地方財政だけでも、国からの交付金も含めて1兆6000億円。そのほか、国からの地方への補助金もあります。

 それが入らなくなったことで、多くの地方自治体では予定していた道路事業の入札や契約を凍結する事態も生じており、地域経済や雇用に悪い影響を与えかねないと危惧しています。

 さらに、各自治体の歳入欠陥は単に道路整備ができないだけではありません。例えば、宮城県知事は「私学への補助金や病院事業への補助金などを削減することになり、結果的に子どもを持つ家族や病院に通院している人たちなどに影響が出ると思う」と述べています。

【混乱への対応】

 一、3月31日に期限が切れる税法は道路関係だけでなく、生活必需品や金融関連の租税特別措置がたくさんありました。このため、与党は「道連れ増税」を防ぐため、道路以外の部分について、07年度の措置を延長する「つなぎ法案」を提案。両院議長の下で野党も受け入れ、道路以外の部分については混乱を避けることができました。

 一、大事なことは、混乱を最小限にする意味で、暫定税率が切れている状態を早く解消するため、参院での審議を促進し、できるだけ早く議決し、参院での意志を明確にすることです。

 一、暫定税率については、既に地方自治体は08年度の予算組みを終え、予算執行の段階に入っていることから、少なくとも08年度予算については、暫定税率を維持しなければならないと考えています。

 一、税制改正法案の修正については、野党との間で合意形成できれば別ですが、法案そのものの修正は容易ではないと考えます。

【首相の新提案】

 一、3月27日の福田康夫首相の「道路特定財源は廃止し09年度から一般財源化する」という提案は極めて画期的で、公明党として高く評価します。

 首相提案を軸に、ぜひ与野党で今後の道路整備や道路特定財源のあり方について、しっかり議論しなければならないと考えていますし、民主党もぜひ協議に応じていただきたい。公明党としても、首相の提案を実施できるように努力してまいります。

【今後の対応】

 一、現在、地方自治体では道路事業の入札を凍結するなど、予算が執行できない状態が出始めており、予算を円滑に執行できる状態にすることが最大の景気対策です。

 一、3月31日の福田首相との党首会談で、公明党の太田代表は、さらなる原油高対策、景気対策を検討するよう首相に提案しています。

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