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【明日へのセーフティーネット】現場はいま(8)医療とビジネス (2/2ページ)
捜査で明らかになったのは、身寄りのない患者たちを食い物にした信じがたい医療の現場だった。冒頭陳述では、「新規の入院患者については心臓病の有無に関係なく、点滴のさい、強心剤をいれて一定期間使用する」「必要性の有無に関係なく、それらしい病名をつけた上で、定期的に各種検査を実施する」−と、治療ではなく、いかに診療報酬を稼ぎ出すかを最優先させた診療マニュアルがあったことを明らかにした。
それでも、「薬物中毒の患者や、身寄りのない患者でもいやがらずに受け入れてくれるという点では、重宝した病院ではあったんです」と、当時の府幹部は打ち明ける。
ある医療関係者は、そんな金もうけ至上主義の病院が、今も大阪だけで「10はある」と告発する。「旧安田病院グループのノウハウは多くの病院に受け継がれている」というのだ。
しかし、医療性善説に立ち、医師の裁量権が広く認められているため行政の監視もなかなか行き届かない。
生活保護費のおよそ半数を占める医療扶助の総額は、旧安田病院グループが摘発された9年の9230億円から、17年には1兆3470億円と1・5倍近く増えている。生活保護受給者が多い大阪などでは、基幹となる内科系病院を拠点に、精神科医院から内科系病院、また精神科医院へと、3カ月ごとに患者を玉突きさせる病院間のネットワークができていると医療関係者の間ではささやかれている。入院90日で入院基本料が引き下げられるため、診療報酬の目減りを防ぐためだ。そんな病院で、どんな治療が行われているのか、実態はなかなか表面化しない。
旧安田病院グループの不正を追及し、今もオンブズマンとして病院訪問を続けるNPO大阪精神医療人権センターの山本深雪事務局長は「事件当時に比べ拡散はしていますが、単身で精神障害を持ち、生活保護を受けているような人の居場所は限られています。地域住民が病院や患者のことを人ごとと感じているうちは、状況は変わらない。医療法人任せでも、批判するだけでもだめなんです」と述べた。
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