◎Uターン就職倍増 一時的現象に終わらせまい
産業人材を確保するため各県が地元出身者のUターン促進に力を入れるなか、富山県の
登録制度を活用して〇七年度にUターン就職した人が二、三十代の転職者を中心に前年度の二倍以上に増加した。富山県は一因として、いわゆる就職氷河期に就職した世代が今の仕事に疑問を抱き、県内企業への転職を考える時期にきている点を挙げている。県外で意にそわない就職をした人を呼び戻す好機といえるが、Uターン就職の増加傾向を、特定の世代の一時的な現象にとどめず確実に定着させ、拡大する一層の努力が石川県を含めて求められている。
北陸の産業界では、特に製造業の慢性的な人手不足が問題になっている。例えば、業績
堅調なコマツ協力企業が人材確保のめどが立たないため、石川県内での工場増設をあきらめた例もある。富山県に続き石川県も企業の新規立地と雇用の創出をめざす地域産業活性化計画を策定しており、産業人材の確保が一段と重くのしかかっている。こうした状況下で、県外の大学に進学した学生だけでなく、現役の中堅社員や団塊世代の退職者らのUターン就職が増えれば、即戦力として、ふるさとの経済のパワーを増すことになる。
富山県の登録制度でUターン就職が増えた一つの理由に、民間の就職支援会社との連携
が挙げられる。石川県も大手商社と組んで首都圏からのUターン促進事業を強化しているが、民間のノウハウを生かす試みはもっと積極的になされてよい。各県のUターン支援策がセミナーや相談窓口などにとどまらず、きめ細かくなってきたのも注目される。富山県が高校同窓会の活用を打ち出せば、石川県は就職活動に入る学生に企業情報を提供するため事前の登録制度を導入するといった具合である。
また、直接の支援事業ではないが、石川県は人材育成の取り組みが優秀な企業を知事表
彰し、広く紹介する制度を設け、小松市はものづくり人材育成のため、社外での研修費を企業に補助する制度を創設した。こうした取り組みで人材育成の熱心さが伝われば、Uターンの促進につながろう。行政のさらなる工夫を望みたい。
◎北が「逆徒」と攻撃 日米で李政権支えたい
二月に発足した韓国の李明博政権が北朝鮮に向かって率直な呼び掛けを始めたとたん、
北朝鮮が沈黙を破って巻き返しに出てきた。核兵器を放棄し、開放への道を選べば、南北協力に新しい地平が開かれる。対話が必要だ。人道問題や拉致問題でも言うべきことは言う等々の李政権の対北政策に反発したのだ。
つい先日は北朝鮮の政府を代弁する朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が、李政権の対北政
策を全面的に否定する長文の論評を掲載し、その中で李大統領を名指しして「逆徒」と最大級の悪口を浴びせた。大統領は「(韓国の)新政権は南北が胸を開いて心から話し合おうという立場だ」と逆に対話を呼び掛ける余裕を見せたが、大統領を孤立させないよう日米が新政権の対北政策の支持を表明するなど、大統領を支えねばなるまい。北朝鮮は考えつくだけの揺さぶりを仕掛けてきて、予想外のことも起こり得るかもしれない。日米韓の結束の強さを北朝鮮に知らしめる必要があるのだ。
北朝鮮は李大統領への悪口に先立ち、韓国側の言葉尻をとらえて、嫌がらせや脅しを掛
けている。前政権の時代から始まり、南北の経済協力のリトマス試験紙とされている開城工業団地の事業について、韓国の金夏中統一相が「核問題の解決なしに開城工業団地の事業拡大は困難」と発言したら、北朝鮮は同工業団地にある南北経済協力協議事務所から韓国政府職員を全員退去させた。
また、韓国軍合同参謀本部議長の金泰栄陸軍大将が国会の聴聞会で「北朝鮮が韓国に核
攻撃を行う兆候があれば、核兵器が配備されている軍事基地などを先制攻撃する可能性を排除しない」と答えたことに対しても発言の取り消しや謝罪を要求し、黄海でミサイルを発射する脅しに出た。李大統領は金大将の発言について「当然の答えであり、この程度は一般的な発言だ」と冷静だが、凍り付いた関係の長期化が予想される。
その李大統領は二週間後に訪日する。日韓関係の修復を図るだけでなく、対北戦略につ
いても共同歩調をとる好機にしたい。