政府は、内閣人事庁の創設や政務専門官の設置などを柱とした「国家公務員制度改革基本法案」を国会に提出した。霞が関の人事制度を変える構造改革といえようが、どこまで実効が上がるか、不透明な部分も多い。
法案では、内閣による人事管理の一元化を目指して内閣人事庁を設け、閣僚が各府省の幹部人事を決める際、助言や情報提供を行う。政務専門官は国会議員への政策説明などで閣僚を補佐し、その他の職員と議員との接触は制限する。
また、?種試験の採用者が各省庁の事実上の幹部候補となる「キャリア制」を廃止し、?〜?種の試験区分を「総合職」「一般職」「専門職」に再編することも盛り込まれた。
「国益よりも省益を優先」と指摘されるような縦割り行政を是正し、官僚主導から官邸主導の政策決定に転換するのが法案の狙いだ。
しかし、法案作成の過程で、官僚や議員サイドからの異論が多く、結果として、人事案作成の権限はこれまで通り各省庁に残された。法案では内閣人事庁は「必要に応じて候補者名簿を作成できる」とし、政務専門官以外の職員の政治家との接触も「閣僚の指示を必要とするなど規律を設ける」といったあいまいな表現にとどまっている。
実現に向けては、必要な措置を法律施行後五年以内、特に内閣人事庁は一年以内を目途に法的措置を講ずるとしており、制度設計はこれからだ。
官僚政治を排除するために、現状の公務員制度の見直しは必要だろう。公務員制度改革を主張している民主党も、この問題を政局にするべきではない。党として対案を出し、与野党で議論を深め、よりよい制度にしてもらいたい。今国会での成立を目指して、汗をかくべきだ。
「Q字」の愛称の拡大文字を本紙で使い始めて三週間。最初は一―三面、社会面などだったが、四月一日から国際面や経済面、各地方版などに広げた。高齢化の進展に伴い、目に優しく読みやすい紙面の要望に応えたいとの思いからだ。喜んでいただければうれしい。
きょう四月六日は、日本新聞協会が二〇〇三年に定めた「新聞をヨム日」である。この日から十二日までは「春の新聞週間」として新聞の重要性を広く再認識してもらうことにしている。山陽新聞社としても、読者に愛され、読まれる新聞づくりへ、これからも工夫をたやさないようにしていきたい。
本紙は、子ども向けのページに力を入れている。第二、第四日曜日付の「日ようしんぶん」には、新聞を教材にするNIE(教育に新聞を)実践校の児童生徒による、新聞を読んで心に残ったニュースに対する意見や感想が掲載される。毎回、若い感性や素直な気持ちの表現に感心する。
三月は、岡山市の就実中二年の二人が書いていた。九日付の三宅菜津美さんは、山陽新聞一月七日付の急速に普及するネット社会に潜む問題や背景に迫る企画記事を取り上げた。「私が新聞を開くと『ネット汚染』という言葉が目に留まった」と書き出し、ネットによるいじめに胸を痛め「人と会って話をすれば、その人の表情や声のトーンで相手の気持ちを理解しやすいが、メールなどでは難しいだろう。だからこそ、どんな時でも相手の気持ちになり、気配りできる優しい心を忘れてはならないと思う」と、思いやりの大切さを訴える。
二十三日付の笹真都子さんは、二月九日付の山陽新聞に載った岡山市が二〇〇八年度から取り組む家庭を柱とした「市食育推進計画」(仮称)の記事が心に残った。「見出しを見て『食育』って何だろう」と自分でも調べてみた。すると「山口県では食に関する感謝の気持ちを育てることに力を入れていて、興味を持ちました」と書く。
新聞には政治や経済、運動、社会、海外事情、さらには身近な話題など、実に多様なニュースが載っている。思いがけない発見や心を揺さぶる出来事に出合え、知る喜びが得られるはずだ。興味や関心を高めて考えたり調べたりすれば、活字離れで懸念される若い人たちの読解力の向上にもつながろう。心に残るニュースを家族で話し合えば世代間の対話が深まる。
新聞は毎日読者の手元に届けられる。春の新聞週間に、読む習慣を身につけてほしい。
(2008年4月6日掲載)