レトロ団地 萌え 写真集やDVD、鑑賞ツアー |
 |
スターハウス(手前)が並ぶ団地。奥の千里桃山台
第2団地は取り壊しが決まっている
(大阪府吹田市、本社ヘリから) |
「無機質」「古い」「画一的」…。とかく否定的に見られがちだった「団地」の価値を見直す動きが今、ひそやかなブームとなっている。現在のマンションとは異なる機能美にひかれる「団地萌え」のマニアが出現。昭和30年代に建設された団地を集めた写真集やDVDが相次いで発売され、各地の団地を見学して回るツアーも開催されている。戦後の住宅需要を支えながらも、老朽化が進み急速に姿を消しつつある団地。高度成長期の貴重な記録として、保存する動きも広がっている。
個性的…絶妙な空間
「これがスターハウスか…」「レトロでかわいい」
先月下旬、大阪で開かれた団地鑑賞ツアー。大阪府吹田市の千里山団地で若者たちが目を輝かせた。昭和32年に建てられたこの団地は今では少なくなった星形の「スターハウス」などが残り、マニアにとっての人気スポット。丘の上の空に伸びる給水塔を取り囲むように、4〜5階建ての小ぶりな集合住宅が建ち並ぶ。
ツアーには府内から集まった8人が参加。この日は約10カ所の団地を回り、年代ごとに変わる建物の個性を鑑賞した。主催した団地マニアの辻野憲一さん(28)は「建物の設計が個性的で、単調な景観にならないように配慮した住棟の配置も絶妙。消えゆく初期の団地は記録として写真に残したい」と魅力を語る。
実際に住むマニア
ブームの先がけとなったのは、初期の公団住宅を中心に全国の団地の魅力を紹介した『僕たちの大好きな団地』(洋泉社)。昨年3月の初版1万2000部は完売し、今年に入って増刷もされた。同社は「マニア向けの出版だったが、売れ行きは予想以上。昔を懐かしんで買う年配の人も多く、昭和レトロブームに乗った部分もあるのでは」と分析する。
鑑賞するだけでなく、実際に一室を借りて住むマニアも。ツアーを主催した辻野さんも大阪市内の公団住宅に住む。周囲ではここ数年の間に50人以上が団地に引っ越したという。辻野さんの友人の林未来彦(みきひこ)さん(28)も「緑が多く、古くて暗いという団地に対する印象が変わった。内装も個性的だし、長く住んでいる人との交流もある」と満足そうに話す。
保存、リフォームも
一方で、各地の団地は老朽化や住民の高齢化という問題に直面。しかし、貴重な建築物として残す動きも出ている。
神戸市垂水区の名谷農住団地では、昨年末から各部屋を順次改装。レトロな鉄製扉などを残しながらも、狭い3DKの壁を取り去ってリフォームした。工事を手がけた同市のデザイン事務所「グリッドデザイン」の竹中弘樹さん(30)は「団地は骨組みがしっかりしており、活用すれば需要はあるはず」と話す。
建て替えが進む大阪府藤井寺市の春日丘団地では、都市再生機構(旧日本住宅公団)が3棟あったスターハウスの1棟を保存。外観は残して建物内部に貯水槽とポンプを入れ、給水施設として活用する。
こうしたブームについて同機構は「団地には当時の技術者のさまざまなチャレンジが詰まっている。それを貴重な資産として愛してもらえるのはありがたい」としている。
■団地
高度経済成長期に都市部での住宅不足解消を目的として建設された鉄筋コンクリート造りの集合住宅。昭和30年に設立された日本住宅公団をはじめ、各地の自治体も相次いで団地を建設し、「団地族」との言葉が流行した。特に入居に一定以上の年収を必要とした公団住宅は庶民のあこがれの的で、応募が殺到。水洗トイレやガス風呂、ダイニングキッチンなどの最新設備を完備した団地は、その後の生活様式を大きく変えたとされる。
(2008/04/06 10:20)
|
|
|
|