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【迫る裁判員制度】木谷明・法大教授に聞く裁判員の心がけ (1/2ページ)
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実際に裁判員に選ばれたとき、われわれはどのように臨めばいいのだろう。元東京高裁刑事部総括判事の木谷明・法政大法科大学院教授(69)に心構えを聞いた。
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■「事件を裁く」心掛けて
法廷に臨む際、心がけてほしいことが3つある。まず第1は、真相は真犯人しか知り得ないということ。いくら検察官や弁護人が証拠を出しても本当のことは結局分からない。裁判は「絶対に正しい答えを探す」という手続きではないことを理解してほしい。
どんなに慎重に審理しても、間違いは起こる。無実の人を罰することが一番の悲劇。それを避けるため、刑事裁判では、検察側に「合理的な疑いをいれない程度の立証」を求めている。これは「まず絶対に間違いないと認めさせる証拠」のことだ。
それだけの立証があれば有罪とすべきだが、そうでなければ無罪にする勇気が必要。「人を裁くのではなく、事件を裁く」という姿勢が求められる。
2つ目は、自白があるからといって、被告人を犯人と簡単に決め付けないこと。犯人でもない者が自白するとは常識的には考えにくいかもしれないが、厳しい取調べに耐えかね、嘘の自白をすることは珍しくない。
密室の取調室でのやり取りは、外部からはうかがい知れない。裁判員として、検察官や警察官の証言を単純に信じるのではなく「本当は被告人の言う通りではないか」と疑いを持ちながら証言を聴いてほしい。
3つ目は常識を大切にしてほしいということ。
プロの裁判官と一緒に評議するのは大変かもしれない。しかし、裁判員に期待されているのは技術的な細かい議論ではない。肩の力を抜いて社会常識のレベルで話し合ってもらえばよい。裁判官が気付かないポイントに気付くことも案外出てくるのではないか。