現在位置:asahi.com>社説 社説2008年04月06日(日曜日)付 日銀総裁人事―新提案で決着のときだ先月20日から空席のままになっている日本銀行の総裁について、政府は新たな人事案をあす国会へ提示する。 米国発の金融不安で世界の市場が揺れるなか、11日には主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議がワシントンで開かれる。この重要な場に新総裁が出られないのでは、日銀に対する国際的な信頼に傷がつく。今後の危機対応に不備が生じる恐れもある。 当然の懸念である。 総裁代行を務める白川方明副総裁を昇格させ、後任副総裁に前財務官の渡辺博史氏を起用する。これが事前に政府が民主党へ打診した案だ。 結論からいうと、この人選に異存はない。民主党など野党も同意して、総裁空席という異常事態を早く解消することが望ましい。 白川氏は日銀で長らく金融政策畑を歩み、理論と実務に精通している。内外の市場関係者から信頼が厚く、この2週間の総裁代行としての仕事ぶりから、すでに総裁の最右翼と受け止められてきた。民主党も白川氏昇格には同意する意向だ。 議論がありそうなのは渡辺副総裁案の方だ。民主党には同意する声も多いが、なお根強い反対もある。 これまで政府が示した2人の総裁候補に対して大蔵省・財務省の次官経験を理由に反対したのと同様、渡辺氏が財務省の出身者だからだ。 だがここは出身がどこかよりも、人物本位で判断すべきだ。 財務官は国際金融と為替・通貨の専門家だ。同じ財務省でも、政治家や他省庁と渡り合って予算を統括する財務次官とは違い、日銀の仕事に近い。 渡辺氏は昨夏まで3年間の財務官時代に、1回も為替市場へ介入しなかった。市場重視の考え方の持ち主で、各国の通貨当局者に信頼されている。副総裁に不適格とは思えない。 今回の人事で、民主党は「財政と金融の分離」を掲げ、政府・政治からの「日銀の独立」を重視してきた。 一方の福田首相は「財金は連携してこそ」との考えだ。財務省出身者の総裁起用にこだわってきた経緯からすると、「連携」を超えて「密着」の路線ではないかとの疑念もわく。 民主党が「分離」を主張し続けたことで、首相は方針を変更せざるを得なくなり、こんどは日銀出身の白川氏を総裁候補にした。「日銀の独立」の大切さを再確認する機会にもなった。これは、民主党の成果ではないか。 また、財務省と日銀の出身者が交代で総裁になってきた「たすきがけ人事」のおかしさも浮き彫りにできた。 政府案でいけば、正副総裁が3人とも50代後半という陣容になる。 日銀が独立を保てるよう、次は若返った日銀首脳陣を国会から後押ししたらいい。もう歩を進めるときだ。 猟銃の所持―保管施設で厳しく管理を狩猟や射撃競技のために猟銃や空気銃を持つ人たちへの規制は、これまで甘すぎたということだろう。 警察庁が銃刀法の改正へ動き出した。銃を持つための許可要件を厳しくしようと検討している。 きっかけは昨年12月、長崎県佐世保市のスポーツクラブで37歳の男が散弾銃を乱射し、2人の命を奪った事件だ。「こんな男になぜ所持を許可したのか」という批判が高まった。 日本には約32万丁もの猟銃や空気銃がある。こうした許可銃による殺人と殺人未遂事件は、昨年までの5年間だけでも19件起きた。東京の医師宅でライフル銃が暴発し、2歳の子が亡くなった痛ましい事故も記憶に新しい。 銃刀法の猟銃規制は30年近くにわたり、抜本的な改正がなされなかった。所持を認めない欠格事由は、薬物中毒や住所不定、銃を使って重大な犯罪を起こした場合などに限られていた。 この欠格事由を広げるのが、めざす改正の大きな狙いだ。 新たに加えようとしているのは、ストーカーをした人や配偶者への暴力が明らかになった人、銃を使わなかったとしても凶悪な罪を犯した場合などである。こんな人に銃を持たせていいはずはない。 経済的に破綻(はたん)した場合や自殺の恐れがある場合も所持を認めない。そんな案も検討されている。 ただ、許可要件を厳しくするだけで十分とはいえまい。銃を使った過去の事件のすべてが欠格事由を広げていれば防げたとは思えないからだ。 そうだとすれば、銃や弾を今のように個人で管理するのではなく、使うとき以外は決められた場所に保管する方法に変えたらよいのではないか。銃が日ごろ手元になければ、カッとなって使うような危険は小さくなる。 警察庁もこの方法を検討したが、現時点では難しいとして見送る方針だ。今ある保管業者だけでは3万丁しか預かれないといった理由からだ。 だが、市民の不安をそのままにしておくわけにはいかない。まず弾だけでも、猟友会や射撃団体などの責任で保管することを考えた方がいい。そして銃を厳重に保管できる場所を少しずつでも増やしていって、いずれは保管施設での管理を義務づけるべきだ。 佐世保の事件のあと、全国で5千人以上が銃の許可を自主的に返納した。「近隣とのトラブル」「高齢」などを理由に、警察が返納を説得した例もあった。いったん許可しても、その後に犯罪を起こす恐れが出てきたら、それを見逃さない態勢が必要だ。 暴力団が隠し持つ違法な銃はもちろん厳しく摘発すべきだが、許可を得た銃も一歩間違えば凶器になる。 その怖さを忘れずに危険の芽を摘んでいきたい。 PR情報 |
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