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【主張】医療事故調 どう公正さを担保するか
患者が死亡した医療事故の原因を究明し、再発防止につなげる「医療安全調査委員会(医療事故調)」制度の最終案が公表された。今後、最終案の問題点をよく整理したうえで解決し、真に実効性のある制度を確立すべきだ。
手術する患者を取り違えたり、器具を患者の体内に置き忘れたりと信じられないような医療事故が起きている。民事訴訟の増加だけでなく、医師の刑事責任が問われるケースも目立つ。
このままでは医療への信頼が失われかねない。医療事故調が機能すれば、医療に対する信頼回復にもなる。
医師法21条は医師が医療事故を含む異状死に遭遇した場合、24時間以内に警察に届け出ることを義務付けている。しかし、最終案ではこの届け出義務を「不要とする」と明記し、届け出を事故調に一本化した。
そのうえで届け出るか否かを病院の判断に委ねた。まず、そこに問題はないだろうか。届けなければならないのに病院が隠して届けないケースがあるだろう。医療事故は隠蔽(いんぺい)されることが多い。厚労省は、届け出を怠った場合は病院側に改善を求める行政処分を出すというが、それなりの厳しい制裁を科す必要がある。
患者の訴えをよく聞くことも大切だ。最終案は遺族が事故調に直接訴える道も残した。遺族が訴えやすい体制を築き上げ、これをきちんと機能させたい。
事故調は事件性が疑われる場合に警察に通知する。通知対象は(1)カルテの改竄(かいざん)や隠蔽(2)過失による事故を繰り返す行為(3)故意や重大な過失−があった場合に限定されている。警察は事故調から通知がなければ事実上、捜査しない。遺族からの告訴には、事故調の調査結果を尊重しながら捜査するかどうかを判断する。遺族の相談も直接受け付けず、事故調に依頼するよう勧める。
現在、医療事故を調査する専門の第三者機関はない。その意味でも画期的な組織である。しかし、最終案に「警察の介入を排除したい医師側の考えに配慮した内容」との批判があるのも事実だ。
事故調は公正・公平な組織でなければ、国民から信頼されない。そのためには、事故調の構成メンバーに患者側の関係者を必ず入れ、調査結果をすべて公表して透明性を保つべきである。