「何かお探しですか」―。百貨店やショップなどで、店員からこんな声を掛けられるのが、ちょっと苦手です。
まったく買う気がなく、単に冷やかしで見ているときもあるし、聞きたいことがあれば、こちらから声を掛けるのが自分の流儀だからです。
かつて販売促進の手法を伝える講演を聴き、趣旨とは裏腹に「そんな店には行きたくない」と思った経験があります。紹介されたのはCD店の事例。この店は購買履歴がレジの端末で分かる会員カードを発行。カードを持った客が後日、来店した際に「先日お買いあげいただいたCDは、どうでしたか?」などと必ず声を掛け、会話するよう店員に徹底した、といいます。
自分なら、そんな趣味や嗜好(しこう)をのぞき見られるような接客は勘弁して、と思った次第です。
一方で、こちらの声掛けに応じ、求める機能やイメージにふさわしい商品を的確に提案してくれる店員もいます。関心が薄いと見るや、それ以上は押してこず、すっと身を引く。付かず離れずの絶妙な間合いを醸す“職人技”の店員。そんな達人にかかれば、自然と財布のひもも緩みます。
いろんな新人が街にあふれる季節となりました。二日付の地方経済面に載った岡山県内企業の新入社員の声。「積極的に声を掛けて顧客と信頼関係を築き…」との抱負を聞かせてくれたのは、百貨店に入社した女性でした。
大いに結構。どんどん声を掛けてください。こちらも、ほとばしる初々しさを疎んじるほど、やぼではないつもりです。
(経済部・小松原竜司)