2008年04月01日 更新

【柔道】“傷だらけ”でもあきらめない!がけっぷち康生が発奮

北京五輪出場へ後がない井上康生は、母校の東海大学で気迫あふれる練習を公開した(撮影・佐藤雄彦)

北京五輪出場へ後がない井上康生は、母校の東海大学で気迫あふれる練習を公開した(撮影・佐藤雄彦)

 北京五輪の柔道男子100キロ超級代表を狙う井上康生(29)=綜合警備保障=が3月31日、神奈川県平塚市内の母校、東海大で練習を公開。代表切符獲得には優勝しかない全日本選抜体重別選手権(5、6日、福岡)へ、TUBEの「傷だらけのhero(ヒーロー)」をテーマ曲に決めた。五輪出場権を逃せば引退の“最後の戦い”へ、傷だらけの金メダリストが自らを奮い立たせる。

 もう、後はない。腹を決めた井上の表情は、穏やかだった。

 「順調に仕上がっています。(全日本選手権と)2試合あるとは考えていない。まずこの体重別に、という考え。優勝を目指して頑張りたい」

 2000年シドニー五輪はオール一本勝ちで金。アテネ五輪では、人生初の1日2度の一本負けでメダルなしに終わった。3度目の五輪は集大成。2月のフランス国際5位の惨敗などで、3大会連続の五輪出場は極めて厳しくなった。しかし、棟田や石井ら代表権を争うライバルと直接対決できるチャンスに望みを懸ける。

 6日の決戦に、テーマソングを携えることも決めた。大相撲の元大関栃東(現年寄・栃東)も勇気づけられたことで有名なTUBEのバラード「傷だらけのhero」。2月にボーカルの前田亘輝(42)とカラオケを共にした際、その歌詞に胸が熱くなった。

 「失礼ですけど、うまいっスよね。頑張れと言ってもらった。感激して、刺激を受けました」

 ♪投げ出してしまうのは簡単。汗まみれで、もう一度輝いて〜。優勝から遠ざかった自分が重なる。傷だらけになってでも勝つ。力をもらえる気がした。この曲を直前まで聴いて本番に臨む。

 「あきらめるのは簡単。最後の最後まであきらめずに戦う。残された試合を全力で戦うのが自分の役目。自分の柔道を出し切りたい。一本を取りに行くのが僕の柔道」

 引退と背中合わせの残り2試合。かつてのヒーローの瞳には、まだ闘志の炎が宿っている。

(周伝進之亮)

■傷だらけのhero

 1994年発売のTUBEのアルバム「終わらない夏」収録。作詞・前田亘輝、作曲・春畑道哉。泥だらけになってでも、あきらめずに夢を追い続ける人間への応援歌で、シングルカットされていないにもかかわらず根強い人気を誇る。

■アスリートの お気に入りの曲

★高橋尚子(陸上)…00年シドニー五輪女子マラソン前に、hitomiの「LOVE2000」を聞いて金メダル
★内藤大助(プロボクシング)…幼少時にC−C−Bのラジオ番組に投書した思い出から、入場曲は「Romanticが止まらない」
★亀田興毅(プロボクシング)…入場曲は映画「ロッキー4」のテーマだったサバイバーの「バーニングハート」
★谷亮子(柔道)…92年バルセロナ五輪前にリンドバーグから贈られた「Over The Top」を聞いて銀メダル
★安藤美姫(フィギュアスケート)…06年トリノ五輪前に絢香の曲で集中。07年世界フィギュア優勝の際、エキシビションで「I believe」のナマ歌に乗って演技
★清原和博(プロ野球)…打席に入る際のテーマは長渕剛の「とんぼ」。イントロのウォウ〜ウォウ〜ウォウォ…では観客も大合唱

■北京五輪への道

 北京五輪の100キロ超級代表は、全日本選抜体重別選手権(4月5、6日、福岡国際センター)と最終選考会の全日本選手権(29日、日本武道館)終了後に、昨秋からの選考会の成績をもとに選ばれる。有力候補は07年世界選手権無差別級金、ドイツ国際Vの棟田康幸(警視庁)と、06年全日本選手権V、オーストリア国際Vの石井慧(国士大)。3番手は1月のグルジア国際優勝の高井洋平(旭化成)で、フランス国際5位の井上は4番手。この劣勢を覆すには2大会連続優勝と、“3強”との直接対決での一本勝ちが最低条件になる。

★女子52キロ級の中村は優勝に自信!

 柔道女子52キロ級の18歳、中村美里が3月31日、北京五輪代表選考を兼ねた全日本選抜体重別選手権(4月6日、福岡)へ自信をのぞかせた。この日、都内で行われた上月スポーツ賞表彰式に出席。賞状と目録を受け取り「これを励みに頑張りたい」と笑顔を浮かべた。

 減量苦を理由に昨秋、48キロ級から転向。11月の講道館杯全日本体重別選手権、12月の嘉納杯東京国際と連勝した。今年2月のフランス国際は3位に終わったが、「いい仕上がりできている」と自信を深めた。渋谷教育学園渋谷高を卒業し、1日で三井住友海上の所属となる。「優勝したい」と派手な社会人デビューを誓っていた。