東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

山手線ホーム 可動柵設置へ 転落防止 3年内めど着手 17年に全駅へ拡大

2008年4月5日 夕刊

線路への転落防止のため、全駅に可動柵が設置されるJR山手線=5日、東京都新宿区のJR新大久保駅で

写真

 JR東日本は、利用者の線路への転落を防ぐ可動式ホーム柵(可動柵)を山手線の全駅ホームに設置する方針を決めた。三年後をめどに設置を始め、二〇一七年までに全二十九駅での稼働を目指す。JRグループの可動柵は新幹線で既に導入されているが、在来線での設置は初めて。

 可動柵はホームの線路際に設置され、車両の扉と連動して開閉するシステム。〇一年一月に新大久保駅で、線路に落ちた男性を助けようとした韓国人留学生李秀賢さん=当時(26)=らが死亡した事故以来、導入が検討されてきた。

 しかし、JR在来線は路線間の乗り入れが複雑で、車両によってドアの位置が異なるなど技術的な課題も多く、導入に踏み切れなかった。JRに先行し、東京メトロなどは設置を実現させていた。

 JR東日本管内の線路転落や車両との接触による死傷事故(自殺を除く)は、最近五年間で百六十一件と深刻で、中でも山手線は三十八件で最多となっている。先月二十五日には岡山駅で突き落とし殺人事件が起き、ホームの安全確保に社会的な関心がさらに集まっていた。

 同社では、三年以内に恵比寿駅など二−三の駅で設置し、その後、全駅に広げる。最大の課題は朝のラッシュ時。同社安全対策部によると、可動柵を設置すると、乗降に要する時間が十秒ほど増える。可動柵の分だけホームが狭くなり混雑が増す恐れもある。こうした課題の克服に向けた調査研究を本格化させる。

 李さんが通っていた赤門会日本語学校の新井永鎮常務理事は「痛ましい出来事だったが、彼の行動がきっかけで対策がとられることになったとすれば、天国の彼も喜んでいるのでは」と話した。

 

この記事を印刷する