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Cover Story スペシャル対談 女優 片瀬那奈 × ガンダム監督 富野由悠季
ロボットアニメの代名詞とも言える“ガンダム”シリーズの原点、ファーストガンダム劇場版3部作が12月21日、DVD-BOXで甦る。

収録されているのは劇場版『機動戦士ガンダムT』、『機動戦士ガンダムU 哀・戦士編』、『機動戦士ガンダムV めぐりあい宇宙編』で、劇場公開オリジナル音声を収録しているのが大きな特徴だ。今回、DVDの発売を記念して、富野由悠季ガンダム総監督と女優の片瀬那奈さんによるスペシャル対談が実現! 富野監督と熱烈なガンダムファンの片瀬さん による熱いトークバトルが繰り広げられた。

片瀬さんが、ガンダムを知ったきっかけは?

片瀬那奈(以下:片瀬)「私は小さい頃から観ていたというわけではないんですよ」

富野由悠季監督(以下:富野)「(世代的に)ゼッタイにそうですよ(笑)」

片瀬「20歳の時かな、ガンダムを漫画で読んだのがきっかけです。それまでガンダムは男の子の作品だって思っていたんです、ロボットだし。私は『テレパシー』という歌を出しているんですが、その詞を書いたときの自分の想いがガンダムのストーリーとすごく通じているって感じたんです。目に見えないものと戦っているとか、人と人との触れ合いとかを強く感じて…。それからハマリましたね」

富野「ガンダムが初めてON AIRされた時って、男の子に受けなかったんですよ。最初についたファンは、中学生から高校1年生くらいの女の子たちでした。アフレコの時にもスタジオ前に20〜30人の女の子がいて、男の子は2〜3人」

片瀬「へぇー!?」

富野「キャラクターに人気が集まっていましたね。まずったなぁ〜って思ったけど、女性の客がついてくれたら興行的には絶対に強いはずだと確信はあったんだけど…放送が打ち切りになってしまって」

片瀬「やっぱりアムロが人気でした?」

富野「悔しいけど違った。シャア、アムロ、セイラ、フラウの順です」

片瀬「ブライトはいないんだ」

富野「ブライトはもう少し後だね(笑)。作り手としてビックリしたのは、何でフラウに目がいくんだろうって思った。中学生くらいの女の子の視野って、ものすごく広いんだなってガンダムで教えられました」

片瀬「ガンダムだけは特別なものだと私も受け止めています」

富野「ガンダムの一番コアなものを見抜いてくれないというのは、しょうがないかなと思っています。僕はメカもロボットも嫌いじゃないけど、TVでストーリーを作るとなると、ロボットは物語を作れません。あれはただの乗り物だって言い続けているのです。でもよく『戦闘シーンが長い』って言われます。もう3分の1切ってくれたらって。射撃戦だから同じように見えるんでしょうね」

片瀬「私は人間味ある戦いをしていると感じました。非現実なのに現実的に思える。昔の人はこうやって戦っていたんだって」

富野「僕もそう思って作っていたのですが最近、まったく逆のことを言われてショックだったのと同時に、納得したことでもあったのですが…」

片瀬「えっ? 何ですか?」

富野「ある方からガンダムを観たときの印象で『ついに戦争離れをした物語ができた、やっぱり時代が変わったと思った』って言われました」

片瀬「具体的にはどんな…?」

富野「戦争という痛みを忘れて、戦場を舞台にして娯楽映画にしている作品、ということなんです。その方にとってガンダムがそうだったんです。僕にとってガンダムはフィクションで、 物語を作る上で戦闘シーンを入れただけなので、それを見抜かれたんですね」

作品に対する富野監督の想いとは…

片瀬「私にとってアムロは等身大。なので感情が入りやすい。“好き”っていうより自分が戦っている、自分目線になれるんですよね。シャアはあまり好きじゃない(笑)。でも最後にシャアが『ジオン軍の中に入って中からつぶすんだ』って言ったときは、彼も違う意識のところで戦っていたんだって気づいて、悲しいと感じましたね」

富野「シャアって、タカラヅカから飛び出して来たみたいだよね(笑)。本当はマスクを着けたキャラクターを使いたくないなって思いながら、エンタテインメントとして作品を考えた時、場合によってはこのくらい極端なことまでやらなければいけないのかなと教えられました。アニメだから当たり前じゃないかと言われるかもしれませんが、映画になるものを作りたかったんです。マンガチックなキャラクターには抵抗がありました」

片瀬「先を見据えて作品を作られていたんですか?」

富野「気持ちの半分は、見据えていました。話の真ん中だけ取っていけば映画になる、というように作っていましたから。けれど全部できるとは思っていませんでしたし、どうなるかなという不安もありました。最終的に3本の映画にまとめられたのは、その予定があったからできたものだし、1話完結でしたら無理だったでしょう」

片瀬「私が一番驚いたのは、登場人物の年齢が若いことなんです。考え方は大人なのに、10代の子たちが戦っていること」

富野「TVアニメで20代の主人公なんていうのは大事件なんです。アムロも15歳って言ってるけど、17歳くらいを想定して演出しました。リアルに恐い話をしますが、本当に戦争になると、大人は子どもを戦場に送るかもしれないって知っておいてください。昔、日本が他国と戦争をしたとき、そういう人事配置もあったらしい。現実に紛争地域では、少年兵がいますよね。子どもを戦争に向かわせる人間社会とガンダムとを考えた時、フィクションで作ったはずなのに、フィクションではないかもしれないという恐さを感じました。マンガだからアニメだからで済ませている人が多い中、リアルな物語だっていうメッセージを受け取ってくれる若い世代が大人になった時、過ちを起こさないようにという想いを込めていることは事実です」

片瀬「よくわかります。そうですよね」

もし片瀬さんをガンダムのキャラクターに当てはめるなら誰でしょう?

富野「パーンと浮かびました! でも口が曲がっても言えない、絶対に怒るから(笑)」

片瀬「えぇー!? 誰ですか? 怒んないですよ」

富野「…キッカ」

片瀬「キッカ! うれしい!」

富野「片瀬さん自身が持っている雰囲気。セイラやミライのようなリアルさはなく、ふわっとした部分がキッカかなって」

片瀬「キッカはちっちゃいけど背が伸びるのかな(笑)」

富野「イメージとして、キッカは人として大きくなっていくだろうと思っていたので、小さくても問題はないですよ(笑)」

片瀬「ファーストガンダムを観ると、なぜか新しい気持ちになれるんですよ」

富野「僕もそう」

片瀬「そういうのって他にはない。」

富野「片瀬さんがそういう風に思えるガンダムの良さって何ですか?」

片瀬「人間の関係性が描かれているところですね」

富野「だけど、あんなロボットものに人間関係なんて関係ないじゃない」

片瀬「ロボットなのに、って感じですよ。街がロボットであふれたら嫌だなとか、メカって男の子のものっていうマイナスのイメージしかなかったんです。なのに、人間味あふれる人たちがロボットを操縦している」

富野「ということは、いちばん人間味を感じるキャラクターは、さっき話していたアムロですよね。つまり等身大だからですか?」

片瀬「そうです」

富野「アムロの等身大って、どういうところにあるんでしょうね」

片瀬「言葉にするのはすごく難しいのですが、何も喋らなくてもすべて分かり合える感じかな。私の友人にそういう人がいます。通じ合っているというか、つながっているというか。話さなくても分かり合えているのですが、会話は大切なものと思っているので、言葉を交わすことによって互いに思っていることの答えあわせをする。その感覚をガンダムに感じたんです」

富野「分かった。片瀬さんは実体験しちゃっているから、これ以上の説明はできないと思う。そういうお友達がいるっていうのは、とても幸せなことですね。まさに本来、人はつながっているものだし、理解できるものだと思う。でも作り手の側からいうと、現実の世界を見た時にそうでもない、だからロボットを使ってそういう物語を作ってみたいと思ったんです。ガンダムの魅力って何ですかと聞かれるのですが、見たもの、触ったもの、自分が納得したもの以外、信じることができないなんて寂しいでしょ、っていえると思う。まだガンダムを知らない人たちは、騙されたと思って一度ガンダムを観てほしい。今回のファーストガンダムDVD-BOXは、オリジナルがとてもいい形で再現されています。懐かしさと未来に対する想いが感じられる作品になっていると思います」

片瀬「そうですね。観なきゃダメですよね、絶対に」

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写真=大沢秀行 ヘアメイク=村端ジン(片瀬那奈) スタイリスト=大沼こずえ(片瀬那奈)
衣装協力=So close,7(ディノス)(片瀬那奈)
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