盲学校の元教員で全盲の長谷川貞夫さん(73)=東京都練馬区=と、筑波技術大の佐々木信之教授らの研究チームが、目と耳が不自由な人のため、振動を使って「会話」する専用の携帯電話を開発した。「話者」が携帯電話のダイヤルボタンを点字に見立てて押すと、「聞き手」の携帯電話に付けた二つの端子(直径1センチ)が一定の規則で振動し、内容が分かる仕組み。佐々木教授によると、こうした盲ろう者の携帯電話の開発は世界でも初めてという。
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点字は六つの点を使って、50音を表現している。携帯電話のプッシュボタン(1、2、4、5、7、8)の六つを点字の点に見立てることで、会話を可能にした。
開発は02年、端子の振動で、点字を体感させる「体表点字」の研究から始まった。通常の点字は点と点の間隔が数ミリで、配列を理解していても、実際に指で識別するのが困難な人も多く、チームは振動に目を付けた。
振動の間隔に一定の規則を持たせ、左右の端子で点字を表現する「2点式体表点字」を考案。体表点字を下敷きにして、盲ろう者用携帯電話を昨年11月に開発した。
「話者」「聞き手」双方の携帯電話に、ボタン操作の情報を振動に変える器機「ビーブル」(縦16センチ、横10センチ、厚さ3センチ)をセットするだけで「会話」ができる。例えば、プッシュボタンの「1」を押せば、左側の端子が長く1回振動し、「あ」だと分かる。
携帯電話に特別な改造は必要なく、チームはビーブルの小型化を進め、実用化を目指す。体表点字をさらに応用すれば、複数の盲ろう者に一斉に情報伝達する「放送」の役割も果たすことができる。
長谷川さんは「コミュニケーションが困難な盲ろう者の大きな力になるはず」。佐々木教授は「点字は世界共通。点字を使う全世界の盲ろう者が利用ができる」と話している。【杉本修作】
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