「お金をかけて、みんなが楽しいことをやってる時に勉強して、いい病院に就職するのが我々の『ゴール』なんです。その人事権を教授が握っている。嫌われると、すべてがフイになる」。横浜市立大医学部を舞台にした謝礼金授受問題。医学部長の嶋田紘(ひろし)教授の元医局員は、医学を志す者の宿命をそう表現した▼嶋田教授と20年来の仲という別のベテラン医師は、「金持ちの家の子しか医者になれないのは問題」と指摘した。本来医師が持つべき志が、金や人事に左右され、歪(ゆが)んだ「ゴール」になってはいけない。医学界の裏側を描いた「白い巨塔」の刊行から、もう40年以上が過ぎている▼今月からわたしの担当分野は横浜市政から県警に変わった。誠意をもってお話いただいた方々、本当にありがとうございました。取材対象は目下、米兵が逮捕された強盗殺人事件。私のゴールはどこにあるのか、考えてしまいます。【池田知広】
毎日新聞 2008年4月5日 地方版