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社説

医療事故調 信頼に基づいた制度に(4月5日)

 医療行為中に起きた死亡事故の原因を究明する第三者委員会のあり方について、厚生労働省が最終試案をまとめた。

 患者が治療中の病とは別に、医療の最中に予期せぬ死を迎えた時、遺族が最初に思うのは「なぜ」という素朴な疑問だ。委員会は公正な調べを進め、結果を分かりやすい言葉で公表しなければならない。

 従来、医療死亡事故の原因究明は、遺族が病院に調査を求めるか、裁判に持ち込むしかなかった。だが、裁判では医師個人の責任追及が中心となり、真相解明や医療機関の過失はうやむやになることもあった。

 委員会設置の狙いは、まさに真相解明とそれに基づく再発防止策の構築にあるが、試案を見る限り、実効性には疑問が残る。

 まず、遺族からの死因調査の依頼先を、委員会に一本化し、警察当局の捜査に優先するとしたことに納得できない。これでは、委員会が通報しない限り、警察は事実上、事件として捜査できなくなる。

 委員会は国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会の医療版ともされるが、同列にはできないだろう。航空機事故などの際は事故調の調査と同時に、警察の捜査も始まるからだ。それによって、原因究明と当事者の責任追及が可能になる。

 ましてや、試案では委員会の立場を「医療関係者の責任追及を目的としたものではない」と位置づけている。刑事事件としての立件への道筋を明確に確保しておかないと、医療現場に甘い制度と批判されるだろう。

 医療機関に義務づけた委員会への届け出に範囲を設けたことも疑問だ。試案は《1》医療過誤が疑われる死亡例《2》過誤かは明らかでないが、行った医療に起因する死亡例−に限定した。

 当初の案では、すべての医療死亡事故について届け出るとしていた。範囲を限った理由が分からない。

 しかも、届け出の対象になるかの判断を、当事者である医療機関にまかせた。届け出を怠った場合の罰則などがあるにしても、責任回避のため、事故隠しが起きないとも限らない。

 委員会の構成メンバーは医療従事者が中心になる。同じ医師として、身内に甘い判断を下すことはないかとの懸念も残る。審議の透明性を担保する方策が必要だ。

 委員会の調査対象となる医療事故は年間二千件程度に上ると厚労省は推計する。だが、調査に当たる解剖医らは全国的に不足している。果たして徹底調査が可能だろうか。

 厚労省は今後、国民からの意見を募った上で、委員会の設置案を今国会に提出する構えだ。議論をさらに重ね、医療への信頼性を回復できる制度を築かねばならない。

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